最新記事

アメリカ社会

高圧的な白人中年女性を表す「カレン」の大流行が、多くのカレンたちを傷つけている問題

Words Can Hurt

2022年12月1日(木)14時47分
カレン・グロス(教育者、作家)
KAREN GROSS

名前に関して嫌なことを言われたら、グロスは堂々と抗議する KAREN GROSS

<「いかにもカレンらしい」人種的特権を振りかざして侮辱する白人女性を示すミーム。他者に対する分別ある言動、そして「カレン」という名を変えない理由とは?>

私の名前はカレン・グロス。過去にはこの名前に問題を感じることはなかった。この名前で、私は一人前のキャリアを築いてきた。

教育現場でのさまざまな役割を通じて執筆や講演活動、人助けの活動に関わり、私はこの名前で成功を収めてきた。

だが近年、「カレン」というミーム(ネット上で拡散する画像やフレーズなど)が登場し、社会的に大きな意味を持つようになった。当初「カレン」は人種的な特権を振りかざして他人を侮辱する白人女性を指していた。それから徐々に意味が拡大してきたが、いずれにせよ否定的なニュアンスだ。

そして今の「カレン」はやたら好戦的で、事あるごとに「責任者を呼べ」と要求するタイプの金髪&短髪の白人女性の代名詞とされている。

白人の優越なんて、私は信じない。ネット社会で言う「カレン」のタイプでもない。でも名前が「カレン」だというだけで、常に否定的なコメントをぶつけられる。

ネット上だけでなく、リアルで付き合いのある人たちも「カレン」を嫌っていると気付いたのは、2019年のことだ。何人もの人にこう言われた。

「残念だね、君の名前は最低なミームと同じだ」。最悪の事態だった。これほど個人的に不快な話が、世間に広まるなんて許せない。

このミームが流行して以来、私は自分の名前に関する否定的なコメントを受け流さないことにしている。私の名前を知らない人が私の前で、「いかにもカレンらしいな」とか「カレンならやりそうだ」などと言うことがある。

そういうとき、私は必ず文句をつける。「気を付けてね、私の名前もカレンなの。そのミームは人を傷つける。言葉を発するときは慎重になって」と。

私が思うに、他人の名前をどう使うかは、その人のアイデンティティーに関わることだ。私は教育現場でトラウマを専門に扱ってきたが、子供たちにとって対応が難しい問題のひとつは、自分のアイデンティティーが脅かされたと感じることだと思う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国人民銀、住宅ローン金利と頭金比率の引き下げを発

ワールド

米の低炭素エネルギー投資1兆ドル減、トランプ氏勝利

ワールド

パレスチナ自治政府のアッバス議長、アラブ諸国に支援

ワールド

中国、地方政府に「妥当な」価格での住宅購入を認める
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 3

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 4

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 5

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 6

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 7

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃の…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    日鉄のUSスチール買収、米が承認の可能性「ゼロ」─…

  • 10

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中