最新記事

子育て

だまし絵、塗り絵、セルフ絵画展──家庭で育む子どもの「アート思考」

2022年10月12日(水)11時30分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部
夢中な子ども

無理に「何か」を見出そうとせず、子どもの世界を尊重する姿勢が大切(写真はイメージです) kyonntra-iStock

<「非言語的なものにどれだけ触れているか、が子どもの感性を育む上で重要だ」と多摩美術大学特任准教授の佐宗邦威氏は言う。身近なツールですぐに実践できるアート思考の育て方とは>

「アート思考が大切」「アート思考を育もう」と、ビジネスシーンから教育現場に至るまで「アート思考」というワードを耳にする機会が増えていないだろうか?

もし「クリエイティブな職業ではないから自分には無関係」と思っているのならば、それは思い違いだ。目まぐるしく進化し続ける現代においては、今まで主流だった論理的思考ではなく、常識にとらわれない考え方や柔軟な発想力が求められている。生き方に「決まった正解」がなくなった今日、創造性に富んだ子どもを育てたいと考える親は少なくないはずだ。 

そんな中、だまし絵で子どものアート思考を育む絵本『くるっと だーれ?』(かしわらあきお著・主婦の友社)が注目を集めている。今そのような考え方が求められる理由、子どものアート思考を育む方法について、多摩美術大学特任准教授で、子どもアートプロジェクトにも携わる佐宗邦威氏に聞いた。

◇ ◇ ◇


――最近よく耳にする「アート思考」という言葉ですが、その定義を教えてください。

これだけ世間でよく耳にするようになった言葉ですが、実はまだ合意された明確な定義はないように思います。アート的な思考について、私自身は「ビジョン思考」と呼んでいます。妄想からスタートして自分の世界観を知覚しながら具体化し、さらに自分なりに組み替え、表現するというサイクルです。

アーティストに限らず、実は起業家や開発者など、「今までにない仕組みを構想する人」は誰しも最初に似たようなプロセスを踏むものだと思います。

――なぜ「アート思考」が注目されるようになったのでしょうか?

ビジネスの世界ではこれまで、最初から正解を求めるようなプロジェクト、つまり左脳的な論理的思考がメインストリームでした。

しかし、今の時代は「1人ひとりがつながってしまい、相互に影響を与え合うことで予測もつかない変化が生まれる世界」に投げ込まれている状態だと思うのです。そんな社会においては論理的思考ではうまく立ち回れないことも多く出てきています。「それはあなた個人の考えだろう」と足蹴にされていたアイデアこそが、結果的には世の中を動かし、変えるようなエネルギーを持っているケースが珍しくありません。

洞察力のある人たちは、現代社会が「表現したもの勝ち」という潮流にシフトしつつあると気づき始めています。だからこそ、「アート的なものの見方」は今急速に見直されているのです。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国がカナダの選挙に執拗に介入、情報機関が警告

ワールド

英国境管理システムに一時障害、技術的な問題で 空港

ワールド

台湾軍、新総統就任前後の中国の動きに備え

ビジネス

英アストラゼネカが新型コロナワクチン回収開始、需要
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「真の脅威」は中国の大きすぎる「その野心」

  • 5

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 6

    デモを強制排除した米名門コロンビア大学の無分別...…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 9

    中国軍機がオーストラリア軍ヘリを妨害 豪国防相「…

  • 10

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 7

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 8

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 9

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 10

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 10

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中