最新記事
エンタメ

米中韓が熱視線...アフリカの音楽産業が「いい投資先」と言えるこれだけの理由

African Music Goes Global With Universal Deal

2024年4月18日(木)11時31分
ノズモット・グバダモシ(ジャーナリスト)
パフォーマンスをするレマ

「Calm Down」で大ヒットを飛ばしたレマ SAMIR HUSSEIN-WIREIMAGE/GETTY IMAGES

<ナイジェリアや南アフリカ発の音楽の魅力がネット配信で拡散。ついにはユニバーサルがレーベルを買収した>

ユニバーサル・ミュージック・グループは2月、メイビン・グローバルというナイジェリアのレコードレーベルの株式の過半数を取得すると発表した。メイビンは、ナイジェリアのアーティストであるレマの大ヒット曲「Calm Down」を手がけたレーベルだ。

近年、アフロビーツやアマピアノといったナイジェリアや南アフリカ発祥の音楽ジャンルの人気が世界中で高まっている。今回の買収も、そうした動きを受けたものだ。

例えば、音楽配信サービスのスポティファイにおけるアフロビーツの楽曲の再生回数は2022年には135億回となり、17年の6倍にまで増えた。レマの「Calm Down」はスポティファイで、アフリカのアーティストとしては初めて再生回数が10億回の大台を突破。YouTubeの再生回数も、アフリカのアーティストの音楽ビデオとして過去最高を記録した。ビルボードの全米シングルチャートでは3位と勢いを見せ、通算で57週にわたって100位以内にとどまった。

メイビンにはレマのほか、アイラ・スターやラディポエ、クレヨンといったナイジェリアの大物アーティストたちも所属している。

アフリカは世界で最も急速に成長している音楽市場だ。だがアフリカから世界に向けた音楽輸出の将来性については、これまで適切に評価されてきたとは言い難い。

インターネット接続が十分に普及していないことが、音楽がもたらす経済効果を阻害している。サハラ砂漠以南のアフリカだけでも6億人近い人々(人口の6割に相当する)は電気のない生活をしている。

それでもアメリカ企業の支援があれば、アフリカ音楽が世界の音楽市場を席巻できる可能性は高い。今年グラミー賞は最優秀アフリカン音楽パフォーマンス賞を新設し、南アフリカ出身のアーティスト、タイラが受賞した。ナイジェリアの歌手バーナ・ボーイは昨年夏、ニューヨークのシティフィールドでコンサートを行ったが、アフリカ人アーティストがアメリカ国内で開催したスタジアムコンサートでチケットが完売したのはこれが初めてだった。

ソニー・ミュージックエンタテインメントやワーナー・ミュージックもナイジェリアや南アフリカに進出、タイラやバーナ・ボーイ、ナイジェリアの大物ミュージシャンのダビドと契約を交わした。ワーナーは22年にアフリコリというアフリカの大手音楽配信サービスを買収。アップル系のレーベル、ガンマも昨年夏、ナイジェリアのラゴスにオフィスを開設している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米CPI、4月は前年比3.4%上昇に鈍化 利下げ期

ビジネス

米小売売上高4月は前月比横ばい、ガソリン高騰で他支

ワールド

スロバキア首相銃撃され「生命の危機」、犯人拘束 動

ビジネス

米金利、現行水準に「もう少し長く」維持する必要=ミ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 5

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    奇跡の成長に取り残された、韓国「貧困高齢者」の苦悩

  • 8

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中