最新記事

世界に挑戦する日本人20

世界は「届かないとは思わない」YOSHIKIが語る日本エンタメ界の現在地と、LAで挑戦を続ける訳

2022年9月2日(金)13時15分
YOSHIKI(アーティスト)

220906p20Yoshiki_03.jpg

X JAPANは2017年、「ロックの殿堂」ロンドンのウェンブリー・アリーナで単独公演を開催  KEVIN NIXON-METAL HAMMER MAGAZINE-FUTURE/GETTY IMAGES

僕は、向こうに行ってアメリカの人になろうとは思っていなかった。日本人として出て行って成功したいと思っていたので、自分を変える必要はないと。最初からそこは決まっていたが、いろいろ学ばなきゃならないとは思っていた。英語もそうだし、最初の何年かは聖書も読んだ。どうして彼らはこう思うのかという文化をまず学ばなければ、英語の歌詞も書けないから。

ただ、1つだけ壁があったとしたら、やはりバンドで行く以上はみんながその意志、その気持ちにならなければいけない、ということ。自分の価値観をメンバー全員に押し付けるのは良くない。それがあって、何となく僕がLAに残り、他のメンバーは日本を拠点に、という形になった」

ドキュメンタリー映画『WE ARE X』では、ロックバンドKISSのベーシストでありボーカルも担当するジーン・シモンズ(イスラエル生まれのアメリカ人)が、「もしX JAPANが英語圏に生まれて英語で歌っていたら、世界一のバンドになっていたかもしれない」と語るシーンがある。YOSHIKIは、当時はこの言葉のハードルが、音楽以外の面にも影響し始めていたと明かす。

「言葉の壁が、思っている以上に精神的な負担になってしまったところはあった。当時はこういったインタビューも英語でできないし、周りにいる人たちが何をしゃべっているのかが分からない。ある種、パラノイドになってしまうのかな。言葉の壁がもっと大きな壁になっていってしまうのかもしれない、と思った。

それでも言葉は話せるようになるからね、勉強すれば。それほど簡単なことはないと言ってしまったら誤解を生むかもしれないが、勉強は頑張った分だけ、努力の分だけ成果は出る。でも例えば作曲は、時にはそうではない。どんなに時間を費やしても、できないときはできないから」

X JAPANはこの海外進出をめぐってメンバーの方向性がずれ始め、97年にToshlが脱退し一度は解散する。しかし10年後の07年に再結成し、その後は北南米、アジアやヨーロッパを股に掛けてツアーを敢行。ハイライトとなったのが、14年のニューヨークのMSG公演だった。とはいえYOSHIKI自身は、それも「ドアを開けた程度」だと表現する。

「まだ、自分が何かを『達成した』感はない。大きな海外公演も、ずっとやっていけるようにならなければ。18年にはコーチェラに出演したけれど、その後にコロナ禍に入ってしまったので......」

X JAPANとして、再び海外で活動する予定はあるのだろうか。

「僕自身は、ここまで来たら、という言い方は変だけれど、決して届かないところにいるとは思っていない。すごく時間もかかってはいるが、そういった階段を着実に上ってきていると思っているので。

ただやはり、X JAPANに限らず、ユニットでもバンドでも僕以外の誰かとやる場合には、本当に海外に向かいたいのかをみんなで確認しないといけないと思う。

海外に出たいアーティストは、世の中に死ぬほどいる。その国ですごく有名だったり、その国でナンバーワンでもナンバーツーでも、国の数だけいる。今後もX JAPANとして世界でやっていくかというのは難しい質問で、今の時点ではイエスでもノーでもない。海外でコンサートをやるかと聞かれれば、なくはないと思う。でもまずは、アルバムの発売かな」

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:メダリストも導入、広がる糖尿病用血糖モニ

ビジネス

アングル:中国で安売り店が躍進、近づく「日本型デフ

ビジネス

NY外為市場=ユーロ/ドル、週間で2カ月ぶり大幅安

ワールド

仏大統領「深刻な局面」と警告、総選挙で極右勝利なら
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「珍しい」とされる理由

  • 2

    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆発...死者60人以上の攻撃「映像」ウクライナ公開

  • 3

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 4

    メーガン妃「ご愛用ブランド」がイギリス王室で愛さ…

  • 5

    米モデル、娘との水着ツーショット写真が「性的すぎ…

  • 6

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 7

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    FRBの利下げ開始は後ずれしない~円安局面は終焉へ~

  • 10

    「ノーベル文学賞らしい要素」ゼロ...「短編小説の女…

  • 1

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 2

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 3

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 4

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…

  • 5

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 6

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 7

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 8

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 9

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 4

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 5

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 6

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 7

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 9

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中