最新記事

日本

オタクにとって日本ほど居心地の良い国はない

OTAKU JOY

2022年8月13日(土)11時20分
はちこ(会社員、『中華オタク用語辞典』著者)
秋葉原の電気街

古い同人誌は秋葉原や池袋にある専門の販売店で購入できる(写真はイメージです) Yongyuan Dai-iStock

<女一人の聖地巡礼も、昔の作品の視聴もできる。日本は包容力にあふれた「オタク天国」だ>

オタクにとって、日本ほど居心地の良さを感じられる国はない。中国出身の私だが、子供時代に『NARUTO-ナルト-』で日本アニメにどハマり。大学で日本語を学び、日本に留学、就職し......と、気付けば日本生活は10年になる。
2022080916issue_cover200.jpg

この間もオタク趣味への熱は冷めることはなかった。アニメを見るだけではない。同人誌作家としてコミケに参加して作品を発表できたばかりか、出版社から声を掛けられ、『中華オタク用語辞典』(文学通信)を出版して作家デビューまで果たすことができた。

アニメゆかりの地への旅行、いわゆる「聖地巡礼」も楽しみの1つだ。

日本人には当たり前すぎて気付かないようなことも、外国人オタクの目から見ると驚きにあふれている。

例えば女性でも気軽に一人旅できる点だ。中国だと、「女一人でタクシーに乗って運転手と二人きりになるのは不安なので、乗車中はずっと誰かに電話して身を守る」といった防衛策はよくあること。中国も治安のいい国と言われるが、日本は異次元だ。

気兼ねなく一人飯できるお店が多い点も素晴らしい。女一人の聖地巡礼もストレスなく楽しめる。

さらに言えば、主流派と外れたニッチな趣味嗜好でも自然に受け止めてもらえる包容力が、日本の魅力だと感じるようになった。

これは実際に住んでいないと分からない部分もありそうだ。というのも、アニメを視聴するだけならば日本も外国も条件は変わらなくなりつつある。中国では最新アニメが日本と同時配信されることが珍しくない。

厳しい検閲で暴力的なシーンや露出度の高いシーンがカットされることはあり、オリジナル版を見たい昔ながらのオタクからすると許し難いが、最初からこの環境で育ったアニメ好きにはあまり気にならないようだ。日本アニメが好きでも日本に行く必要なんてないというわけ。

最新アニメを見るだけなら、そのとおりかもしれない。でもその外側に日本の魅力はある。

例えば過去作品にアクセスすることは中国では難しい。一度配信された作品でも、時間がたてば配信終了していることが多いからだ。調べてみると、『けいおん!』など一世を風靡した人気作品ですら、配信が終わっていた。若きオタクたちが「掘る」(昔の作品を発掘して楽しむ)すべがない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪賃金、第1四半期は予想下回る+0.8% 22年終

ビジネス

TSMC、欧州初の工場を年内着工 独ドレスデンで

ビジネス

ステランティス、中国新興の低価格EVを欧州9カ国で

ビジネス

午前の日経平均は続伸、米株高で 買い一巡後は小動き
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 4

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プー…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 8

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中