最新記事

ジョンのレガシー

骨董商の男性とも交際──オノ・ヨーコが歩んだ40年【ジョン・レノン没後40周年特集より】

2020年12月9日(水)11時30分
ジョン・ジャクソン

衰えぬ存在感 ヨーコは世界を飛び回っ て新しいアート作品を制作し、昔の曲を ダンスナンバーとしてヒットさせる一方、平和と愛の メッセージを広めてきた GETTY IMAGES

<前衛芸術家、ミュージシャン、平和活動家――87歳の今日まで精力的に活動し注目を集め続けてきた。本誌「ジョンのレガシー」特集より>

ジョン・レノンが狂信的なファンのマーク・デービッド・チャップマンに射殺されてから40年。妻のオノ・ヨーコは長い間、世界中を旅し、実に多くの有力美術館や施設のためにアートを制作し、昔の曲をダンスナンバーとしてヒットさせる一方で、新曲のレコーディングも行っている。しかも、レノンの評判を注意深く守り、亡き夫の平和と愛のメッセージを世界に広めようとしてきた。
20201215issue_cover200.jpg
もっとも、ずっとこうした人生を送ってきたわけではない。「しばらくの間は、生き続けることに強い意欲を持てなかった」と、1990年のニューヨーク・デイリー・ニューズ紙のインタビューで述べている。最初の頃は、夫の殺害時に5歳だった息子のショーンのために、どうにか気持ちを奮い立たせていた。「母親として、絶対に生き延びようと自分に言い聞かせていた」

ヨーコは私生活をあまり語らないが、2001年まで20年近く、骨董商の男性と交際していた。推計によれば資産は7億ドル以上。その多くは、夫の音楽活動によるものだ。夫の音楽や似顔絵の使用許可を与える企業は厳選している。無断使用に気付けば裁判に訴える。

ヨーコは現在87歳。今もニューヨークのマンハッタン地区の高級マンション「ダコタハウス」に、つまり40年前にレノンが射殺された場所に住み続けている。ヨーコの社会的活動と芸術活動は常に注目を集めてきた。2010年には、世界平和への貢献を理由に、第8回ヒロシマ賞を受賞している。

この秋、バラク・オバマ前米大統領の妹マヤ・ストロも共同創設者に名を連ねる非営利団体ピース・スタジオは、ヨーコの平和構築への取り組みを評価し、彼女の名前を冠した平和賞の創設を発表した。そのイベントには、チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世、俳優のテッド・ダンソン、シンガーソングライターのリアノン・ギデンズらもバーチャル形式で出席した。

前衛芸術家としては、60年代にジョンと出会った頃に最初の絶頂期を迎えたと言えるだろう。当時の作品を集めた回顧展は、ロンドン、東京、コペンハーゲン、ベネチア、オスロなど、多くの都市で開催されているが、ヨーコは新しい作品も制作し続けている。2004年のリバプール・ビエンナーレでは、ジョンの故郷リバプールがヨーコの作品で埋め尽くされた。その2年後には、ロンドンのセントポール大聖堂で、白いロープを光線の束に見立てた作品などが展示された。

ヨーコの代表作の1つが『ウィッシュ・ツリー』。来場者が短冊に願いごとを記して木につるすという作品だ。これまで、ニューヨークやロンドン、ワシントン、サンフランシスコ、東京、ダブリン、ベネチアなどで、この作品が展示されてきた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

岸田首相、「グローバルサウスと連携」 外遊の成果強

ビジネス

アングル:閑古鳥鳴く香港の商店、観光客減と本土への

ビジネス

アングル:中国減速、高級大手は内製化 岐路に立つイ

ワールド

米、原発燃料で「脱ロシア依存」 国内生産体制整備へ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 2

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 3

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を受け、炎上・爆発するロシア軍T-90M戦車...映像を公開

  • 4

    こ、この顔は...コートニー・カーダシアンの息子、元…

  • 5

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる4択クイズ

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 7

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 10

    メーガン妃の「限定いちごジャム」を贈られた「問題…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 6

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中