最新記事

株の基礎知識

なぜアメリカの「雇用」に注目が集まるのか、投資をする人が見るべきポイントは?

2023年2月3日(金)08時40分
佐々木達也 ※かぶまどより転載

■非農業部門の雇用者数

「非農業部門の雇用者数」は、文字どおり農業を除いた企業の雇用者数で、自営業や経営者なども含まれません。農業を除く理由は、農業では季節など景気とは関係のない場面で一時的なアルバイトなどの雇用が発生することもあり、ノイズとなりやすいからです。

参照される数値は、雇用者数が前月比でどれだけ増えたか減ったかで判断されます。企業などの給与支払い帳簿をもとに算出されるため、「失業率」よりも速報性が高いとされています。

直近12月の非農業部門の雇用者数は前月比22.3万人増で、市場予想の20万人増を上回りました。

■失業率

「失業率」も、雇用の情勢を示す重要な指標として参照されます。「失業者÷労働力人口×100」で計算され、ここでいう失業者とは「現在仕事がないが、過去4週間以内に仕事を探していた人」と「レイオフ(一時帰休)中の人」が対象となります。

失業率は家庭のサンプル調査によって算出されるため、景気の変動の反映が他のデータよりも遅くなる性質があります。しかし、非農業部門の雇用者数などの速報性の高い数値は発表の翌月などで修正されることも多々ありますが、失業率は修正されにくく正確性が高い側面があります。

12月の失業率は3.5%となり、横ばいの予想に反して低下しています。

コロナ禍の影響が世界に広がり始めた2020年4月には、失業率は14.7%まで上昇し、1948年の統計開始以来、過去最悪の数値となりました。リーマン・ショックが発生したときでも、悪化時はおよそ10%でしたので、いかに急激に雇用環境が悪化したかがわかります。

しかし、その後のアメリカ経済は回復が進み、雇用環境も改善が続いて、2019年12月には失業率3.5%と約50年ぶりの水準まで低下しました。現在でも、その水準を若干下回る程度であることから、人手不足の環境が続いていることが示されています。

■平均賃金の伸び率

「平均賃金の伸び率」も重要な指標です。12月の民間企業の季節調整済みの平均時給は、前年同月比で4.6%増加したものの、伸び率は3月の5.6%をピークに減速しています。

しかし、過去の好景気時には4%程度、不況時には2%程度だったことを考えると、インフレや人手不足でアメリカの賃金上昇ペースは非常に高い水準であることがわかります。

(参考記事)相場は「節分天井」? で、その後は? 気になる2月相場の特徴と傾向【今月の株価はどうなる?】

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

ガザ南部、医療機関向け燃料あと3日で枯渇 WHOが

ワールド

米、対イスラエル弾薬供給一時停止 ラファ侵攻計画踏

ビジネス

米経済の減速必要、インフレ率2%回帰に向け=ボスト

ワールド

中国国家主席、セルビアと「共通の未来」 東欧と関係
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岸田のホンネ
特集:岸田のホンネ
2024年5月14日号(5/ 8発売)

金正恩会談、台湾有事、円安・インフレの出口......岸田首相がニューズウィーク単独取材で語った「次の日本」

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    「自然は残酷だ...」動物園でクマがカモの親子を捕食...止めようと叫ぶ子どもたち

  • 3

    習近平が5年ぶり欧州訪問も「地政学的な緊張」は増すばかり

  • 4

    いま買うべきは日本株か、アメリカ株か? 4つの「グ…

  • 5

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 6

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 7

    迫り来る「巨大竜巻」から逃げる家族が奇跡的に救出…

  • 8

    イギリスの不法入国者「ルワンダ強制移送計画」に非…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地ジャンプスーツ」が話題に

  • 2

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受ける瞬間の映像...クラスター弾炸裂で「逃げ場なし」の恐怖

  • 3

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 4

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    外国人労働者がいないと経済が回らないのだが......…

  • 7

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 8

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 9

    サプリ常用は要注意、健康的な睡眠を助ける「就寝前…

  • 10

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

  • 9

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 10

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中