最新記事

インタビュー

テレ朝・大下容子の「たたかわない生き方」──「女子アナ」、23年間の継続、女性の働き方、SNS

2021年10月19日(火)17時50分
朴順梨(ライター)

予定調和ではないのが生放送の醍醐味

――情報番組でありながらも日々のニュースを取り上げているので、テーマやゲストは多岐にわたります。日々降ってくるニュースに対して、どのように向き合っていますか?

本当に毎日勉強が大変です。「たたかわない生き方」と言っていて、人と争ったりするのは避けたいほうですが、ニュースとは日々格闘していて。毎朝スタッフがゲストの方から聞き取ったことをメモにしてメールで送ってくれるんですけど、それを読み込んでから、皆さんに話をうかがうようにしています。

例えば今日(取材日)のオンエアでは日本とアメリカ、オーストラリア、インドの新たな枠組みである「QUAD(クアッド)」と、米英豪による「AUKUS(オーカス)」という安全保障の枠組みを取り上げたのですが、まず地図を広げて、インドが中国ともパキスタンとも国境を接していることを確認するところから始めました。

毎日準備時間がすぐになくなってしまうのですが、せっかくゲストをお招きしたのに、その方が一番言いたいことを聞き出せないと、不完全燃焼になってしまうと思うんです。だから、自分の中で「ここが大事だ」という点を探し出すようにしています。

――今まで出会った方について本でも触れていますが、ほかにどんな方が記憶に深く残っていますか?

数年前に小泉純一郎元総理をお迎えしたのですが、その際に脱原発を巡って、コメンテーターと小泉さんのやりとりがヒートアップしました。番組として他にも聞かなくてはならないことがあり、時間も限られていたので「ちょっとこっち向いていただけません?」と私が割って入ったら、「ああ、はい」とそこで気付いてくださいました(笑)。

この時は展開が予測できずドキドキしましたが、生放送らしい印象深い回になりました。事前に考えていた質問が順序も時間配分も違ったものになりましたが、小泉さんもコメンテーターの方も真剣勝負だったので、これこそライブだなと思いました。

何が起きるのかが分からないのが生放送の醍醐味で、きれいにまとまることだけが正解ではなく、言葉に詰まったり涙ぐんだり焦ったり、そういう予定調和ではないところにリアルがあり、番組として大切にしていきたいなと思っています。

――先ほど「結婚や出産という起伏がなかったから続けてこられた」とおっしゃいました。以前よりは働きやすくなったとはいえ、まだまだ子育てしながらの仕事は難しい部分があると思います。悩める女性にアドバイスをするとしたら、どんな言葉をかけますか。

経験していないので偉そうなことは言えませんが、テレビ朝日のアナウンス部は産休、育休を経て復帰している後輩も多く、みんな忙しい中見事に頑張っています。

でもどこで働いていてもそうだと思いますが、仕事と家庭の比重は1人1人考え方が違うと思うので、自分はどうしたいのかを伝えることが大事ではないでしょうか。「言わなくても分かってもらえる」というのは難しいと思うので、「私はこうしたい」をしっかり伝えれば、意向を尊重してもらえる方向に進むのでは。

すぐには叶えてもらえなくても、今後に活かされるかもしれない。自分の思いを伝えて、周りとコミュニケーションを取っていくことが必要だと思います。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米国株式市場=上昇、ナスダック最高値 CPIに注目

ビジネス

NY外為市場=ドル下落、PPIはインフレ高止まりを

ビジネス

米アマゾンの稼ぎ頭AWSトップが退任へ

ビジネス

ソニー、米パラマウント買収を「再考」か=報道
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少子化の本当の理由【アニメで解説】

  • 2

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 3

    アメリカからの武器援助を勘定に入れていない?プーチンの危険なハルキウ攻勢

  • 4

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 7

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 8

    ロシア国営企業の「赤字が止まらない」...20%も買い…

  • 9

    ユーロビジョン決勝、イスラエル歌手の登場に生中継…

  • 10

    「ゼレンスキー暗殺計画」はプーチンへの「贈り物」…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 6

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 10

    日本の10代は「スマホだけ」しか使いこなせない

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 6

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中