最新記事
経営

転職者の「情報持ち出し」をどう防ぐ? 中小企業ならではの情報漏洩リスクは?...弁護士が解説

2024年2月27日(火)08時10分
堀田陽平 ※経営ノウハウの泉より転載
情報漏洩

TimeStopper69-shutterstock

<今や「手土産転職」をどう防ぐかは、重要な課題。決して大企業だけの問題ではなく、むしろ中小企業のほうがリスクが...>

中小企業において、退職者が情報を持ち出し組織外に持ち込む「手土産転職」は、まさに情報漏洩リスクの温床となります。キャリアアップを求め、転職が当たり前となった昨今、リスクマネジメントの一環として、手土産転職をどう防ぐかは重要な課題となっています。

そこで、今回は「手土産転職」を未然に防ぐ方法に焦点を当て、リスクの最小化を目指す方法について解説します。

手土産転職とは

退職者が、退職前に所属していた企業の企業秘密を転職先に持ち込むといった、いわゆる「手土産転職」を行うケースがみられます。これには、はたしてどのようなリスクがあるのでしょうか。

■手土産転職のリスク

手土産転職が発生すると企業の取引先の情報や財務情報、技術情報といった重要な経営情報が転職先に漏れてしまい、自社の競争力を低下させてしまうリスクがあります。

「情報漏洩は大企業の問題」と思われているかもしれませんが、中小企業でも問題になります。

むしろ、ジョブローテーションが行われておらず、また知財戦略も十分ではないことが多い中小企業では、取引先の情報や重要なノウハウが属人的に帰属していることが多く、転職とともにこれらの情報が転職先に漏れてしまうことが多いのです。

たとえば、従業員の給与に関する情報を退職者が持ち出し、転職先に渡したことによって、転職先がよりよい待遇を他の従業員に提示し、引き抜かれるといったことが起きるケースがあります。

また、典型的には取引先の奪取が問題になりやすいです。ジョブローテーションが行われない中小企業では、取引先との関係が担当者に属人的になりやすく、その担当者が転職してしまうと、重要な取引先の情報も同時に持ち出され、取引先が転職先に奪われてしまうというケースがあります。

そのほか、知的財産として保護されないノウハウもまた、会社の財産としてではなく、特定の従業員の頭の中にだけ存在していることがあります。その結果、その従業員が転職することで自社がノウハウを失うだけでなく、転職先にノウハウが漏れてしまうといったケースもみられます。

それでは、このような情報漏洩を防ぐためにはどのような対策が求められるのでしょうか。

(参考記事)罰金だけじゃ済まないかも!個人情報保護法違反のリスクと情報漏洩事例【弁護士が解説】

やっておくべき手土産転職対策

前提として、従業員には「辞職の自由」がある以上、転職自体を止めることはできません。したがって、重要であるのは情報をいかに守るかという点です。

具体的には、

・就業規則、労働契約、誓約書などで守秘義務を課す
・不正競争防止法上の「営業秘密」として保護されるように情報を管理する
・可能なものについては、商標や特許などを取得しておく

といった方法で、情報を守ることになります。以下で各項目を詳しくみていきます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮とロシアは「無敵の戦友」、金総書記がプーチン

ワールド

衆院解散、いまの支持率では簡単ではない=公明党代表

ビジネス

中国CPI、5月は0.3%上昇 PPIは下落続く

ワールド

G7首脳会議、課題解決難航か 支持率低迷など国内問
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 2

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 3

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬で決着 「圧倒的勝者」はどっち?

  • 4

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 5

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…

  • 6

    長距離ドローンがロシア奥深くに「退避」していたSU-…

  • 7

    たった1日10分の筋トレが人生を変える...大人になっ…

  • 8

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 10

    【衛星画像】北朝鮮が非武装地帯沿いの森林を切り開…

  • 1

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が34歳の誕生日を愛娘と祝う...公式写真が話題に

  • 2

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 3

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車が、平原進むロシアの装甲車2台を「爆破」する決定的瞬間

  • 4

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…

  • 5

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 6

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らか…

  • 7

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 8

    アメリカで話題、意識高い系へのカウンター「贅沢品…

  • 9

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 10

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    我先にと逃げ出す兵士たち...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 10

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中