転職者の「情報持ち出し」をどう防ぐ? 中小企業ならではの情報漏洩リスクは?...弁護士が解説
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<今や「手土産転職」をどう防ぐかは、重要な課題。決して大企業だけの問題ではなく、むしろ中小企業のほうがリスクが...>
中小企業において、退職者が情報を持ち出し組織外に持ち込む「手土産転職」は、まさに情報漏洩リスクの温床となります。キャリアアップを求め、転職が当たり前となった昨今、リスクマネジメントの一環として、手土産転職をどう防ぐかは重要な課題となっています。
そこで、今回は「手土産転職」を未然に防ぐ方法に焦点を当て、リスクの最小化を目指す方法について解説します。
手土産転職とは
退職者が、退職前に所属していた企業の企業秘密を転職先に持ち込むといった、いわゆる「手土産転職」を行うケースがみられます。これには、はたしてどのようなリスクがあるのでしょうか。
■手土産転職のリスク
手土産転職が発生すると企業の取引先の情報や財務情報、技術情報といった重要な経営情報が転職先に漏れてしまい、自社の競争力を低下させてしまうリスクがあります。
「情報漏洩は大企業の問題」と思われているかもしれませんが、中小企業でも問題になります。
むしろ、ジョブローテーションが行われておらず、また知財戦略も十分ではないことが多い中小企業では、取引先の情報や重要なノウハウが属人的に帰属していることが多く、転職とともにこれらの情報が転職先に漏れてしまうことが多いのです。
たとえば、従業員の給与に関する情報を退職者が持ち出し、転職先に渡したことによって、転職先がよりよい待遇を他の従業員に提示し、引き抜かれるといったことが起きるケースがあります。
また、典型的には取引先の奪取が問題になりやすいです。ジョブローテーションが行われない中小企業では、取引先との関係が担当者に属人的になりやすく、その担当者が転職してしまうと、重要な取引先の情報も同時に持ち出され、取引先が転職先に奪われてしまうというケースがあります。
そのほか、知的財産として保護されないノウハウもまた、会社の財産としてではなく、特定の従業員の頭の中にだけ存在していることがあります。その結果、その従業員が転職することで自社がノウハウを失うだけでなく、転職先にノウハウが漏れてしまうといったケースもみられます。
それでは、このような情報漏洩を防ぐためにはどのような対策が求められるのでしょうか。
(参考記事)罰金だけじゃ済まないかも!個人情報保護法違反のリスクと情報漏洩事例【弁護士が解説】
やっておくべき手土産転職対策
前提として、従業員には「辞職の自由」がある以上、転職自体を止めることはできません。したがって、重要であるのは情報をいかに守るかという点です。
具体的には、
・就業規則、労働契約、誓約書などで守秘義務を課す
・不正競争防止法上の「営業秘密」として保護されるように情報を管理する
・可能なものについては、商標や特許などを取得しておく
といった方法で、情報を守ることになります。以下で各項目を詳しくみていきます。