最新記事
自動車

中国メーカーのEVシフト進み、当局が過剰生産を懸念 テスラの上海工場増強に暗雲か

2023年6月20日(火)12時17分
ロイター

ウェドブッシュ・セキュリティーズのアナリスト、ダン・アイブス氏は「テスラは中国での事業を倍増させている。昨年はいくつか思わぬ問題が生じたが、マスク氏の訪中で状況が落ち着き、今後数カ月内には進展について発表があるだろう」と述べた。

テスラの上海工場は、2019年の着工から1年足らずで竣工した。

テスラ、中国は欠かせぬ存在

米国のバイデン政権はEVの国産化支援策を打ち出しており、テスラの中国依存は米国では複雑な問題だ。

しかし、テスラの上海工場は昨年、「モデル3」と「モデルY」を合計で約71万1000台生産するとともに、最大生産能力を年間100万台強に引き上げた。この工場は競合他社に対するコスト優位性の面で極めて重要で、東南アジアとカナダへの輸出を後押ししている。

テスラは2022年に131万台だった全世界販売台数を30年までに2000万台に引き上げるとの目標を掲げており、設備投資の可能性についてインドと協議しているほか、韓国やインドネシアなどの政府からも誘致の働き掛けを受けている。

中国のEV大手、蔚来集団(NIO)によると、中国がサプライチェーン(供給網)と原材料を支配しているため、中国で生産されたEVは、他国での生産に比べてコスト面で20%も有利だ。

だが、中国政府が供給過剰への懸念を強め、テスラが上海工場の増強を計画する中、EV市場参入を目指す中国のスマートフォン大手、小米(シャオミ)は生産許可の取得が遅れている。

また、米高級EVメーカー、ルーシッド・グループも中国での自動車生産に意欲的だが、実現できる可能性は低いとの助言を受けている、と複数の業界関係者が明かした。

シャオミとルーシッドは、コメント要請に応じなかった。

テスラが当局の承認を待たされているという状況は、5年前に初めて上海工場開設の取り決めを結んだときの温かな歓迎ぶりと対照的だ。

当時、アナリストは中国はテスラを利用し、国内のEV開発に拍車をかけることができると考えていた。強力なテスラの進出で弱小メーカーは生き残りのために迅速に動かざるを得なくなるからだ。

オートモビリティーのルッソ氏は「状況は様変わりした」と話した。その上で「ただ、テスラにとって中国は欠かせない。中国進出でサプライチェーン上の利点を手に入れ、中国での競争によって世界的により競争力のある企業になれるからだ。生産能力を手に入れられなければ、機会を逸する」と上海工場増強の意義を強調した。

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2023トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます


2024110512issue_cover150.png
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年11月5日/12日号(10月29日発売)は「米大統領選と日本経済」特集。トランプvsハリスの結果で日本の金利・為替・景気はここまで変わる[PLUS]日本政治と迷走の経済政策

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


ビジネス支援
地域経済やコミュニティを活性化させる「街のお店」...その支援が生み出す、大きな効果とは?
あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

アップル、見通しさえず株下落 第4四半期は予想上回

ワールド

米裁判所、マスク氏訴訟の手続き保留を決定 大統領選

ワールド

北朝鮮、31日発射は最新ICBM「火星19」 最終

ワールド

原油先物、引け後2ドル超上昇 イランがイスラエル攻
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:米大統領選と日本経済
特集:米大統領選と日本経済
2024年11月 5日/2024年11月12日号(10/29発売)

トランプ vs ハリスの結果次第で日本の金利・為替・景気はここまで変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本で「粉飾倒産」する企業が増えている理由...今後はさらなる「倒産増加」が予想される
  • 2
    「まるで睾丸」ケイト・ベッキンセールのコルセットドレスにネット震撼...「破裂しそう」と話題に
  • 3
    幻のドレス再び? 「青と黒」「白と金」論争に終止符を打つ「本当の色」とは
  • 4
    脱北者約200人がウクライナ義勇軍に参加を希望 全員…
  • 5
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 6
    北朝鮮軍とロシア軍「悪夢のコラボ」の本当の目的は…
  • 7
    天文学者が肉眼で見たオーロラは失望の連続、カメラ…
  • 8
    中国が仕掛ける「沖縄と台湾をめぐる認知戦」流布さ…
  • 9
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 10
    自爆型ドローン「スイッチブレード」がロシアの防空…
  • 1
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大きな身体を「丸呑み」する衝撃シーンの撮影に成功
  • 2
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴出! 屈辱動画がウクライナで拡散中
  • 3
    キャンピングカーに住んで半年「月40万円の節約に」全長10メートルの生活の魅力を語る
  • 4
    幻のドレス再び? 「青と黒」「白と金」論争に終止符…
  • 5
    2027年で製造「禁止」に...蛍光灯がなくなったら一体…
  • 6
    【クイズ】次のうち、和製英語ではないものはどれ?…
  • 7
    世界がいよいよ「中国を見捨てる」?...デフレ習近平…
  • 8
    日本で「粉飾倒産」する企業が増えている理由...今後…
  • 9
    「決して真似しないで」...マッターホルン山頂「細す…
  • 10
    【衝撃映像】イスラエル軍のミサイルが着弾する瞬間…
  • 1
    ベッツが語る大谷翔平の素顔「ショウは普通の男」「自由がないのは気の毒」「野球は超人的」
  • 2
    「地球が作り得る最大のハリケーン」が間もなくフロリダ上陸、「避難しなければ死ぬ」レベル
  • 3
    秋の夜長に...「紫金山・アトラス彗星」が8万年ぶりに大接近、肉眼でも観測可能
  • 4
    外来種の巨大ビルマニシキヘビが、シカを捕食...大き…
  • 5
    死亡リスクはロシア民族兵の4倍...ロシア軍に参加の…
  • 6
    大破した車の写真も...FPVドローンから逃げるロシア…
  • 7
    モスクワで高層ビルより高い「糞水(ふんすい)」噴…
  • 8
    韓国著作権団体、ノーベル賞受賞の韓江に教科書掲載料…
  • 9
    エジプト「叫ぶ女性ミイラ」の謎解明...最新技術が明…
  • 10
    コストコの人気ケーキに驚きの発見...中に入っていた…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中