斜陽デトロイトは「デジタル」で蘇る──先端技術の集積拠点として台頭

MICHIGAN MOVES UP

2023年3月8日(水)12時40分
ジェイク・リンジマン(自動車業界担当)

230314p46_MGN_02.jpg

2021年にオープンしたジープの工場はデトロイトに30年ぶりに誕生した新自動車工場 BILL PUGLIANO/GETTY IMAGES

ミシガン州への投資を増加させているのは、フォードだけではない。フィアット・クライスラー・オートモービルズ(FCA)も同様の動きを見せている。FCAは21年にPSAグループと合併し、現在はステランティスの一部になっている。

合併前のFCAは、シリコンバレーにユーザー体験部門とデザイン部門を置いていた。しかし合併後はシリコンバレーに加えて、ミシガン州にもステランティスの「ソフトウエア体験」部門が設置された。

「デトロイト地域はユーザー体験関連のテクノロジーで傑出した成果を上げつつあり、シリコンバレーの部品関連企業の多くはデトロイト周辺にも拠点を設け始めている」と、ステランティスのビンス・ガランテ副社長(グローバル・ユーザー体験デザイン担当)は本誌に語っている。「私たちは、アップル、ディズニー、マイクロソフトなどの出身者を採用して、グループ傘下の14のブランド全てを支援している」

州政府も助成金で後押し

フォード、クライスラーと共に米3大自動車メーカーの一角であるGMも、ミシガン州への投資に力を入れている。

ミシガン州オリオンタウンシップの工場を、フルサイズのEVピックアップトラックの工場に転換するために40億ドルを投資。韓国のLGエナジーソリューションとの合弁会社を通じて、同州ランシングにバッテリー工場を建設するためにも26億ドルを投資している。

GMの2カ所の新工場では、合わせて4000の新規雇用が創出されると期待されている。ミシガン州が運営する「ミシガン戦略ファンド」は、この2つのプロジェクトに合計6億ドルを超す助成金の拠出を決めた。

LGは、GMとの合弁によるランシングのバッテリー工場のほかに、同州ホランドのバッテリー工場の拡張も進めている。米CNBCの最近の報道によると、ミシガン州はジョージア、ケンタッキー両州と共に、2030年までにアメリカのEV用バッテリー生産の中心地になる可能性が高いという。

「この動きは、昨年EVの人気が高まってから始まったわけではない。全ては15年にまでさかのぼる」と、この1月までミシガン州の最高モビリティ責任者を務めたトレバー・ポールは本誌に語った。「私たちはもともと自動運転車に注力していたが、EVに方向転換し、今は水素に目を向け始めている」

ミシガン州での自動車産業関連の投資は、従来型の自動車づくり以外にも向けられている。バイデン政権の「インフレ抑制法」の下、連邦政府の資金援助により、太陽光パネル、EV充電器、走行中のEVに充電できる道路など、さまざまなテーマのプロジェクトが計画されている。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

必要なら利上げも、インフレは今年改善なく=ボウマン

ワールド

台湾の頼次期総統、20日の就任式で中国との「現状維

ワールド

イスラエル軍、ガザ北部で攻勢強化 米大統領補佐官が

ワールド

アングル:トランプ氏陣営、本選敗北に備え「異議申し
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 7

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 8

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 9

    英供与車両から巨大な黒煙...ロシアのドローンが「貴…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 8

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中