最新記事

EV

中国勢が支配するEV電池市場を奪還へ カギとなるのは急速充電と小型化

2022年7月14日(木)09時27分
数分で充電ができるバッテリー開発を進めている英スタートアップ企業ニオボルトのバッテリー

EV開発競争を繰り広げている自動車メーカーが現在注力しているのは走行距離の延長だ。しかしバッテリーのスタートアップ企業は既に、より小型で長持ちし、安価でしかも充電が急速にできる次世代バッテリーの実用化に取り組んでいる。写真はニオボルトのバッテリー。英ケンブリッジで6月撮影(2022年 ロイター/Nick Carey)

電気自動車(EV)開発競争を繰り広げている自動車メーカーが現在注力しているのは、いざという時に充電設備が見つかるかどうかという消費者の不安を和らげるための走行距離の延長だ。しかしバッテリーのスタートアップ企業は既に、より小型で長持ちし、安価でしかも充電が急速にできる次世代バッテリーの実用化に取り組んでいる。

各自動車メーカーは、市場をリードするテスラを追いかける形で、1回の充電から次の充電までに300マイル(482キロ)走れるEVの生産を目指している。一方バッテリーのスタートアップ企業は、今後公共の充電施設が普及していくとともに走行距離はさほど重要ではなくなると考え、ニオブやシリコンカーボン、タングステンといった新素材を用いた急速充電バッテリーを試す段階に入った。

バッテリーは、EVを構成する部品で最も値段が高い。それだけに本当に急速充電が可能となり、さらに充電施設が至るところで利用できるようになれば、自動車メーカーにとっては、もっと小型バッテリーを備えたEVを生産し、手頃な価格設定でより販売台数を増やすことで利益を拡大するビジネスモデルが構築されるだろう。

酸化ニオブ電極を利用し、ほんの数分で充電ができるバッテリー開発を進めている英スタートアップ企業、ニオボルトのシバレディ最高経営責任者(CEO)は「EV市場の高価格帯にいる初期採用者(アーリーアダプター)は比較的大型で走行距離を長くしてくれるバッテリーパックを欲しがった。なぜならその購買力があったからだ。より価格を重視する主流採用者には、もっと小さいが、(化石燃料車と)同じように5分で燃料充てんが可能なバッテリーパックが必要になる」と語った。

現状で世界の車載バッテリー生産市場を支配しているのは中国勢で、例えば寧徳時代新能源科技(CATL)は1回の充電での走行距離を長くするバッテリー開発を進めている。これに対してニオボルトや同じ英国のエチオン・テクノロジーズ、米グループ14テクノロジーズといった欧米のスタートアップ企業は、充電時間が非常に短いバッテリーの市場投入に尽力している。

スタートアップ企業のデータを提供するピッチブックによると、昨年の車載バッテリー技術関連投資は94億ドル(約1兆2900億円)と、2020年の15億ドルから6倍以上に膨れ上がった。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

トムソン・ロイター、第1四半期は予想上回る増収 A

ワールド

韓国、在外公館のテロ警戒レベル引き上げ 北朝鮮が攻

ビジネス

香港GDP、第1四半期は+2.7% 金融引き締め長

ビジネス

豪2位の年金基金、発電用石炭投資を縮小へ ネットゼ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 8

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 9

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 10

    「みっともない!」 中東を訪問したプーチンとドイツ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中