最新記事

中国経済

恒大集団の本拠地・深圳で不動産仲介業者が苦境 市場冷え稼ぎ激減

2021年12月5日(日)11時33分
深圳市で建設中のマンション

1760万人の人口を抱え、騰訊控股(テンセント・ホールディングス)などハイテク関連の大企業の本社がいくつも置かれている深圳では、小規模な不動産仲介業者の事務所閉鎖が起きている。写真は深圳市で建設中のマンション、7日撮影(2021年 ロイター/David Kirton)

2014年に故郷を離れたジェリー・タンさん(30)は、中国のハイテク産業の中心地であり、世界で最もホットな不動産市場のひとつである深圳で不動産仲介業者となり、以前は満ち足りた生活を送っていた。

ほんの数年前まで、マンションの販売で多い月に5万元(7800ドル)も稼いでいた。それが昨年は月1万5000元ほどになり、今年はさらに5000元程度に落ち込んだ。しかもその大半は賃貸物件の仲介手数料だ。

「今年は物件を売りさばくのがものすごく大変だ。買い手は市場の成り行きを見極めようとしているし、不動産開発業者は資金繰りが苦しくなり、仲介業者への手数料支払いに時間がかかっている」と言う。

1760万人の人口を抱え、騰訊控股(テンセント・ホールディングス)などハイテク関連の大企業の本社がいくつも置かれている深圳では、小規模な不動産仲介業者の事務所閉鎖が起きている。ロイターが取材した8つの仲介業者も、同業者の少なくとも3分の1が既に事業をたたんだか、閉鎖を検討していると答えた。

金融情報サービスの財新は9月、大手不動産取引プラットフォーム「鏈家(Lianjia)」の社内メモに基づき、同社が深圳のオフィスの5分の1、約100カ所を閉鎖する方針だと報じた。鏈家と親会社のKEホールディングスはコメント要請に応じなかった。

深圳の不動産市場が停滞し、仲介業者に影響が及んでいるのは、地元の当局がこの1年、物件価格をより手頃な水準にするため、2軒目購入の頭金を高く設定したり、転売価格に上限を設けるなど締め付け策を導入してきたことが一因だ。

しかし仲介業者によると、国内の不動産業界が信用危機に見舞われているのも原因の1つで、同業界の苦境がいかに広範囲に及んでいるかが浮き彫りになっている。過去40年間の中国の急激な経済成長を象徴する深圳がこの流れに飲み込まれているならば、国内で影響を受けていない地域はほとんどないだろう。

中国の不動産市場は、指標によっては国内総生産(GDP)の4分の1を占める。しかし当局が今年に入って開発業者の過剰な借り入れを抑制する債務上限を導入し、かつてないほど苦しい状況に立たされている。

その結果、世界で負債額が最大の中国恒大や佳兆業集団など大手開発業者は資金繰りが危機的な状況に陥った。両社はいずれも深圳に本社を置く。一方、政策当局者はこうした取り組みは必要な改革であると考え、見直すことはなさそうだ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ政権で職を去った元米政府職員、「

ワールド

日中双方と協力可能、バランス取る必要=米国務長官

ビジネス

マスク氏のテスラ巨額報酬復活、デラウェア州最高裁が

ワールド

米、シリアでIS拠点に大規模空爆 米兵士殺害に報復
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    懲役10年も覚悟?「中国BL」の裏にある「検閲との戦い」...ドラマ化に漕ぎ着けるための「2つの秘策」とは?
  • 2
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリーズが直面した「思いがけない批判」とは?
  • 3
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツよりコンビニで買えるコレ
  • 4
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦…
  • 5
    「何度でも見ちゃう...」ビリー・アイリッシュ、自身…
  • 6
    70%の大学生が「孤独」、問題は高齢者より深刻...物…
  • 7
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 8
    中国最強空母「福建」の台湾海峡通過は、第一列島線…
  • 9
    ロシア、北朝鮮兵への報酬「不払い」疑惑...金正恩が…
  • 10
    ウクライナ軍ドローン、クリミアのロシア空軍基地に…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 5
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 6
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 10
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 6
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 7
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 8
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中