最新記事

税制

G20、法人課税強化で合意 共同声明で変異株に懸念示す

2021年7月11日(日)16時23分
国際課税に関するG20のシンポジウム

主要20カ国・地域(​G20)財務相・中央銀行総裁会議は10日、新型コロナウイルスの変異株と途上国のワクチン不足が経済回復の障害になりうるとの認識を盛り込んだ共同声明を採択した。写真は国際課税に関するG20のシンポジウム。7月9日、ベネチアで撮影(2021年 G20 Italy/Handout via REUTERS)

主要20カ国・地域(​G20)財務相・中央銀行総裁会議は10日、新型コロナウイルスの変異株と途上国のワクチン不足が経済回復の障害になりうるとの認識を盛り込んだ共同声明を採択した。

また、世界的に企業への課税を強化するため、法人税率を最低15%以上にすることで合意した。経済協力開発機構(OECD)による7月1日の大筋合意を追認した。10月にローマで開くG20首脳会議で最終合意を目指す。

共同声明は、ワクチンと経済対策によって前回4月の会合に比べて経済見通しは改善しているものの、インドで最初に確認されたデルタ株など変異株が障害になりうると指摘した。「回復度合いは国によって、さらは各国国内でも大きく異なり、とりわけ変異株の広がりとワクチンの接種ペースの差によるダウンサイドリスクに引き続きさらされている」とした。

その上で、あらゆる政策手段を取ることを確認するとともに、物価と財政の安定を守ることにも言及した。

一方、議長国イタリアのフランコ財務相は、新型コロナ対策で市民に新たな制限を課すことを回避する方針でも合意したと表明。「人の移動や生活様式に対する制限の再導入を回避すべきという考えで一致した」と述べた。

共同声明では新型コロナワクチンについて「世界的に公平な分配」を支持する立場を強調したものの、具体的な提案は盛り込まれず、国際通貨基金(IMF)、世界銀行、世界保健機関(WHO)、世界貿易機関(WTO)が提言するワクチン向けの500億ドルの資金調達に留意するにとどまった。

イタリアは、10月のG20首脳会議までに途上国向けのワクチン資金の問題についてG20で改めて議論するとし、新たな変異株に目を向ける必要があると述べた。詳細には踏み込まなかった。

IMFのゲオルギエワ専務理事は、ワクチン接種状況の差などによって世界経済は回復の格差が拡大する可能性があると警鐘を鳴らした。

法人課税強化で合意

今回の会議で政策面の最大のイニシアチブとなったのは、国際的な法人課税を巡る合意だ。

15%以上という最低法人税率の設定は、多国籍企業が税率の低い国を選んで納税するのを阻止する狙いがある。また、課税の一部を企業が拠点を置く場所ではなく、製品・サービスを販売した場所に基づいて行う計画で、アマゾン・ドット・コムやアルファベット傘下のグーグルなどIT(情報技術)大手への課税が変化することになる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米・イランが間接協議、域内情勢のエスカレーション回

ワールド

ベトナム共産党、国家主席にラム公安相指名 国会議長

ワールド

サウジ皇太子と米大統領補佐官、二国間協定やガザ問題

ワールド

ジョージア「スパイ法案」、大統領が拒否権発動
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバいのか!?

  • 3

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイジェリアの少年」...経験した偏見と苦難、そして現在の夢

  • 4

    「まるでロイヤルツアー」...メーガン妃とヘンリー王…

  • 5

    時速160キロで走行...制御失ったテスラが宙を舞い、4…

  • 6

    日本とはどこが違う? 韓国ドラマのオリジナルサウン…

  • 7

    チャールズ英国王、自身の「不気味」な肖像画を見た…

  • 8

    「裸に安全ピンだけ」の衝撃...マイリー・サイラスの…

  • 9

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 10

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 1

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 6

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 7

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 8

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 9

    SNSで動画が大ヒットした「雨の中でバレエを踊るナイ…

  • 10

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中