最新記事

日本社会

コロナショックに支援の輪 普及進むクラウドファンディング

2020年7月6日(月)09時42分

「枡」の生産・販売を行う大橋量器は、新型コロナウイルスの感染拡大で3─5月の売り上げが前年比で半減、クラウドファンディングを利用して資金を調達した。写真は大橋量器の枡(2020年 ロイター/大橋量器提供)

結婚式や祝いごとの席に欠かせない「枡」の生産・販売を行う大橋量器(岐阜県大垣市)。代表取締役の大橋博行氏は、コロナ・ショックを機にクラウドファンディングを利用した。新型コロナウイルスの感染拡大で3─5月の売り上げは前年比で半減。「藁にもすがる思い」だったという。その結果、目標の50万円を大幅に上回る約300万円の資金を集め、支援者も366人に上った。大橋氏は「想定外でとても嬉しかった」と話す。

コロナで利用拡大、5月は前年比5倍のファンディング会社も

日本クラウドファンディング協会によると、国内のクラウドファンディングの市場規模は19年度で169億円。17年度の77億円から約2倍になっている。新型コロナでの政府の経済対策は事業規模230兆円にのぼるが、小規模事業者や個人が資金を得るには手間や時間がかかるなどの問題があり、そのすき間を埋めるかたちで利用が広がっている。

大手クラウドファンディング会社・CAMPFIRE(東京・渋谷区)によると、今年5月のクラウドファンディング支援総額は前年同月比6倍(約40億円)に上り、支援者は5月単月で39万人、前年同月比4.8倍になった。資金調達をした事業者のうち、約8割は初めてクラウドファンディングを利用したという。特に、緊急事態宣言発出後に資金を募る事業者が増え、新型コロナ関連のプロジェクト数は2000件に上った。同業他社でも同様の動きがみられた。

大橋量器の大橋氏は、相次ぐ注文のキャンセルを受けて、無利子無担保融資の活用に加え、雇用調整助成金や持続化給付金の申請を行った。だが、手元にキャッシが届くまで時間がかかる上、慣れない手続きにも戸惑ったという。事業を継続するための資金調達手段として思いついたのが、クラウドファンディングだった。

広がる利用先、学生支援も

アルバイト先の休業により収入が減少した学生支援にもクラウドファンディングは活用されている。大手クラウドファンディング会社・READYFOR(東京・千代田区)で資金調達を行った筑波大学事業開発推進室長・山田哲也氏は「学内での基金とは別に(資金調達の)チャンネルを持つために利用した」と話す。目標金額は3000万円。卒業生を中心に1142人が寄付を行い、約2840万円が集まった。

山田氏は「政府も困窮学生への支援メニューを用意しているが、どうしても『収入が減った証明』などのプロセスが必要で、支援が遅れてしまう可能性もある」と指摘。その点、クラウドファンディングはスピード感を持って支援ができると効果を実感している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ブラジルCPI、5月中旬の前月比伸びは予想下回る 

ワールド

ローマ教皇が異例の謝罪、同性愛者に差別的表現

ワールド

イスラエルのラファ作戦は「大規模」でない、米高官が

ビジネス

米Tモバイル、USセルラーの携帯事業買収へ 44億
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲームチェンジャーに?

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    メキシコに巨大な「緑の渦」が出現、その正体は?

  • 4

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 5

    汎用AIが特化型モデルを不要に=サム・アルトマン氏…

  • 6

    プーチンの天然ガス戦略が裏目で売り先が枯渇! 欧…

  • 7

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 8

    なぜ「クアッド」はグダグダになってしまったのか?

  • 9

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 10

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 1

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃がのろけた「結婚の決め手」とは

  • 4

    ウクライナ悲願のF16がロシアの最新鋭機Su57と対決す…

  • 5

    黒海沿岸、ロシアの大規模製油所から「火柱と黒煙」.…

  • 6

    戦うウクライナという盾がなくなれば第三次大戦は目…

  • 7

    能登群発地震、発生トリガーは大雪? 米MITが解析結…

  • 8

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲー…

  • 9

    「天国にいちばん近い島」の暗黒史──なぜニューカレ…

  • 10

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された─…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中