最新記事

マーケティング

W杯スポンサーで独り勝ち現代自動車

北米市場で販売攻勢を強めている現代が、ワールドカップ人気とアメリカ善戦の相乗効果で大躍進を遂げるかも

2010年6月15日(火)16時57分
マシュー・デボード

目立つヒュンダイ W杯のスタジアムにもHYUNDAIの広告が(11日のウルグアイ対フランス戦) Carlos Barria-Reuters

 韓国の自動車メーカー、現代自動車は、国際サッカー連盟(FIFA)の公式スポンサーとしてワールドカップ(W杯)南アフリカ大会に車両を提供し、試合の中休みに放送されるその名も「現代ハーフタイム・リポート」という番組を提供している。これらのスポンサー契約を巡っていったい何社の自動車メーカーが熾烈な競争を繰り広げたか知らないが、近年マーケティング上のヒットを放ち続けてきた現代自動車にとって、これはひときわ輝かしい栄冠になるかもしれない。

 第一に、「現代ハーフタイム・リポート」は完璧だ。サッカーファンはCMによる試合の中断を何より嫌う。自社ブランド名を露出させたい企業にとってハーフタイムはほぼ唯一のチャンスなのだ。

 また過去10年というもの海外市場、とりわけ北米市場での販売攻勢を強めてきた現代自動車にとって、W杯は2度おいしいイベントだ。世界中が熱い視線を注いでいるのはもちろんだが、普段ならサッカーを無視するアメリカ人にとっても、W杯だけは特別だ。

 とくに今後数週間は、アメリカ人のサッカー熱が頂点に達する可能性がある。アメリカは先週土曜、イングランドとの試合を引き分けに持ち込んだので、1次リーグの勝敗が決まるまで少なくともあと数試合は熱狂の舞台が用意されたのだ。現代自動車のメッセージや製品を目にするアメリカ人の数もそれだけ増える。

GMに引き抜かれた立役者

 W杯関連イベントの幟などあらゆる場所に現代自動車のロゴを使わせているのも、同社の奇跡的マーケティングの成功のあかしだ。

 現代自動車は昨年来、新車購入者が1年以内に失業した場合車を返品できる制度や、ガソリン代を一部肩代わりするサービスなど、消費者向けに革新的な販売キャンペーンを行ってきた。高級車市場への参入も順調だ。後輪駆動のセダン、ジェネシスは、価格帯ではベンツやBMW、レクサスと同等クラス、技術的にはインフィニティやアキュラを上回り、おおむね好評を博している。

 現代自動車の唯一の問題は、5月に北米のマーケティングを担当していたジョエル・エワニックをゼネラル・モーターズ(GM)に引き抜かれたことだ! マーケティングの天才エワニックは、絶滅した恐竜を甦らせるという広告業界で最も刺激的な仕事の誘惑に勝てなかったのだ。

The Big Money.com特約)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ベラルーシ、平和賞受賞者や邦人ら123人釈放 米が

ワールド

アングル:ブラジルのコーヒー農家、気候変動でロブス

ワールド

アングル:ファッション業界に巣食う中国犯罪組織が抗

ワールド

中国で「南京大虐殺」の追悼式典、習主席は出席せず
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の展望。本当にトンネルは抜けたのか?
  • 3
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 4
    「前を閉めてくれ...」F1観戦モデルの「超密着コーデ…
  • 5
    現役・東大院生! 中国出身の芸人「いぜん」は、なぜ…
  • 6
    世界最大の都市ランキング...1位だった「東京」が3位…
  • 7
    首や手足、胴を切断...ツタンカーメンのミイラ調査開…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    「体が資本」を企業文化に──100年企業・尾崎建設が挑…
  • 10
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 9
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 10
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中