最新記事

ウォール街

ゴールドマン、記録的ボーナスの背信

公的資金で急場をしのぎ、多くの競争相手が消滅した金融界で過去最高ペースの荒稼ぎ。ウォール街の改革はどこへ行ったのか

2009年6月25日(木)16時50分
バレット・シェリダン(ニューヨーク支局)

神妙だった頃 今年2月、公的資金の注入を受けた銀行の1つとして米議会に呼び出されたロイド・ブランクファイン会長兼CEO(最高経営責任者) Larry Downing-Reuters

 まずは英オブザーバー紙からの引用を。


 ゴールドマン・サックスの今年のボーナスは、同社140年の歴史のなかでも最高額に達する見込み。今年上半期の業績は絶好調で、巷では、金融危機を生き残った旧投資銀行が(高い報酬とリンクしたハイリスクのビジネスモデルを復活させて)金融規制改革を頓挫させるのではないかという懸念も高まっている。

 金融危機で競争相手が減ったことと、外国為替や債券、固定金利商品のトレーディング収入が急増したおかげで、ゴールドマン・サックスは大幅増益になっている、と匿名の同社社員は言う。


 さらに、オンライン金融専門誌ベースライン・シナリオの共同創設者ジェームズ・クワックは付け加えた


 たいていのことと同じく、ゴールドマンの高額報酬にいついては2通りの解釈ができる。楽観的に見れば、大手銀行が巨額の利益を上げているのは、金融界が間もなく平常の機能を取り戻し、近い将来パニックに陥る可能性も減る兆候だと考えられる。

 悲観主義者から見れば、灰の中から蘇った不死鳥のような利益を大銀行が謳歌しているのは、米政府が低利融資や資本注入の形で巨額の援助をしたおかげ。保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)を救済したことも忘れてはならない。

 競争が減ったことも銀行の利益に貢献している。ベアー・スターンズはJPモルガン・チェースに買収され、リーマン・ブラザーズは破綻した。メリルリンチはバンク・オブ・アメリカが買収したが、そのバンカメもその後シティグループと並んで業績不振に苦しんでいる。


 結局、何か得られたものはあったのか。


 政府は公的資金を使って半ば病人の銀行業界を買い(シティとバンカメの決算がどうなるか要注目だ)、ゴールドマンやJPモルガンのような一部の勝ち組は以前にも増して強力になった。こうした「貸し」と引き換えに、政府は貧血気味の金融規制改革法案を成立させたいと思っている。


 そのように言われると、とても有利な取引には聞こえない。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

焦点:闇に隠れるパイロットの精神疾患、操縦免許剥奪

ビジネス

ソフトバンクG、米デジタルインフラ投資企業「デジタ

ビジネス

ネットフリックスのワーナー買収、ハリウッドの労組が

ワールド

米、B型肝炎ワクチンの出生時接種推奨を撤回 ケネデ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 5
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 6
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 7
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 8
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 9
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 3
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 4
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 7
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 10
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中