コラム

M&M'sのキャラが「セクシー」じゃなくなった! という主張の「気持ち悪さ」(パックン)

2022年02月08日(火)18時35分
ロブ・ロジャース(風刺漫画家)/パックン(コラムニスト、タレント)
M&M'sチョコ(風刺画)

©2022 ROGERS-ANDREWS McMEEL SYNDICATION

<アメリカの保守派に絶大な影響力を持つFOXの人気司会者カールソンが、M&M'sチョコのキャラクターの「多様性」を猛烈に批判したが......>

アメリカの保守派に最も影響力を持つ人のランキングがあれば、トップを飾るのはトランプ前大統領に違いない。だが第2位は保守系放送局の代表格FOXニュースの人気司会者、タッカー・カールソンだろう。

カールソンの冠番組は昨年、ケーブルテレビのプライムタイムで視聴率1位を獲得。視聴者数は中道路線であるCNNの看板司会者、アンダーソン・クーパーの番組の倍以上だ。カールソンは、昨年タイム誌の「最も影響力のある100人」にも選ばれた。一方、クーパーは2017年にピープル誌の「最もセクシーなニュースメン」の1人に選出されたから、まあ、引き分けだね(?)。

カールソンの人気は十分理解できる。鋭い分析と卓越したコミュニケーション能力で、国民にとって最も大事なテーマについて世論をリードする。例えば「お菓子のマスコットキャラクターは十分セクシーかどうか」とか。

冗談ではないよ。チョコレート菓子M&M’sの製造元マース社は先月、ダイバーシティ(多様性)の受け入れ促進のため、M&M’sのキャラクターたちのデザイン変更を発表した。例えば、茶色のキャラは従来のステレオタイプ的な女性像を見直して、履いている靴がピンヒールからヒールの高さが低いものになった。

これにカールソンが怒りを爆発させた。「セクシーじゃなくする。これが進歩だ」と皮肉を吐き、「M&M’sはキャラを魅力ゼロの両性的なものにするまで満足しないだろう。一緒に一杯飲みたくない状態。それがゴール。性的に興奮しなくなれば、平等の達成だ」と、厳しく非難した。

ピンヒールを履いたM&M'sに興奮?

風刺画では、M&M’sのロゴがトランプのスローガンMaga(Make America Great Again=アメリカを再び偉大に)に変わり、昨年の連邦議会議事堂乱入で有名になったデモ参加者と似た角付きの毛皮の帽子をかぶった熱狂的なトランプ支持者として描かれている。そしてI’m a straight white male...but still sexy!(異性愛者の白人男性だが......それでもセクシーだ!)とほえている。

これがTucker Carlson’s preferred M&M character(タッカー・カールソンが好むM&M’sのキャラクター)であったら、確かに気持ち悪い! カールソンは議事堂乱入の参加者を擁護するし、性的少数者を軽蔑する発言が多いのは確か。だが、こんなキャラがセクシーだと本気で思っていると決め付けるのは少しかわいそうかもしれない。

でも心配ご無用。そもそもカールソン自身の発言からうかがえる、「ピンヒールを履いているM&M’sと一杯飲みたい! 性的に興奮する!」という嗜好自体が十分気持ち悪いからね。

プロフィール

パックンの風刺画コラム

<パックン(パトリック・ハーラン)>
1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『大統領の演説』(角川新書)。

パックン所属事務所公式サイト

<このコラムの過去の記事一覧はこちら>

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

午前の日経平均は反落、一時700円超安 前日の上げ

ワールド

トルコのロシア産ウラル原油輸入、3月は過去最高=L

ワールド

中国石炭価格は底入れ、今年は昨年高値更新へ=業界団

ワールド

カナダLNGエナジー、ベネズエラで炭化水素開発契約
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 9

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 7

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story