コラム

「トランプ」が民主党の勝因。そして共和党に2人の新星が登場した

2022年11月18日(金)06時30分

221122p18_POT_02.jpg

2024年大統領選の共和党有力候補に躍り出たデサンティス(左)とトランプ(2020年7月) DREW ANGERER/GETTY IMAGES

共和党に現れた2人の新星

今回の中間選挙を通じて、24年の大統領選を考える上で重要なことがほかにも4つ見えてきた。

第1に、政治の専門家たちはどうしてもバイデンの強力な政治的嗅覚を見くびってしまうらしい。

中間選挙前の予測では、有権者の関心事はあくまでも経済であり、いくら民主主義の危機を訴えても心に響かない、と言われていた。ところが、選挙戦終盤のバイデンの精力的な訴えを受けて、民主主義の未来と人工妊娠中絶をめぐる状況に懸念を抱く人たちが投票所に足を運んだ結果、民主党候補の得票が増えた地域も多かった。

2020年大統領選の民主党予備選で序盤に出遅れたときも、ほとんどの有力メディアは、バイデンは終わったと酷評した。実際には、バイデンの政治家としての判断力は識者の予測以上だった。最終的に、大統領に当選したのはバイデンだ。

第2に、共和党に2人の新星が登場した。

1人は、いま話題のロン・デサンティスだ。今回、フロリダ州知事選で20ポイント近くの大差により再選されたデサンティスは、2024年大統領選の共和党予備選でトランプを凌駕する存在になるかもしれないと言われ始めている。

デサンティスの圧勝は、テキサス州知事だったジョージ・W・ブッシュが98年の中間選挙で圧倒的な強さを見せつけて再選を果たしたことを思い出させる。ブッシュはそのまま快進撃を続け、2年後の大統領選で勝利を手にした。

デサンティスは単に大差で再選に成功しただけでなく、民主党支持者が多いとされてきた中南米系の有権者の票も60%近く獲得した。この点もブッシュと似ている。

しかし、デサンティスの州知事選勝利が持つ本当の意味を浮き彫りにしているのは、選挙直後のトランプの反応だ。トランプは、フロリダ州での得票は20年大統領選の自分のほうが多かったとソーシャルメディアに投稿。デサンティスが州知事選に初出馬したとき推薦しなければよかったとも、周囲に語っているという。

要するに、デサンティスの地滑り的勝利により、「ボス」の座が奪われるのではないかと恐れているのだ。

もう1人の新星は、エリス・ステファニクだ。ミレニアル世代で、ニューヨーク州選出の共和党下院議員。現在、女性としては議会共和党で最も高い地位に就いている政治家だ。

中間選挙で共和党がニューヨーク州で大きな成果を上げたことで、いっそう評価を高めている。

今回、民主党が強いニューヨーク州で共和党は民主党から4つの下院の議席を奪った。しかも、民主党のショーン・マロニー選挙対策委員長も落選させた。選対委員長の役職を務めるのは、自分の選挙の心配がないはずの大物議員。マロニーの落選は衝撃的な出来事だった。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ダウ平均、一時初の4万ドル突破 好決算や利下げ観測

ビジネス

金融デジタル化、新たなリスクの源に バーゼル委員会

ワールド

中ロ首脳会談、対米で結束 包括的戦略パートナー深化

ワールド

漁師に支援物資供給、フィリピン民間船団 南シナ海の
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇跡とは程遠い偉業

  • 3

    アメリカはどうでもよい...弾薬の供与停止も「進撃のイスラエル」は止まらない

  • 4

    老化した脳、わずか半年の有酸素運動で若返る=「脳…

  • 5

    半分しか当たらない北朝鮮ミサイル、ロシアに供与と…

  • 6

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 7

    2023年の北半球、過去2000年で最も暑い夏──温暖化が…

  • 8

    共同親権法制を実施するうえでの2つの留意点

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    仰向けで微動だにせず...食事にありつきたい「演技派…

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 8

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    「終わりよければ全てよし」...日本の「締めくくりの…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story