コラム

アメリカはいつまで(愚かな)債務上限論争を続けるのか

2021年11月16日(火)13時00分

では、どうしてアメリカの政治家たちは、債務上限をめぐる愚かしい火遊びに熱を上げているのか。1つ目の理由は、不安をかき立てられるものだ。政治家たちは政府債務に対する国民の不安を利用して、財政破綻という悪夢のシナリオで脅かすことにより物事を自らの有利に運ぼうとしている。

もう1つの理由は、ある意味では希望を抱かせるものだ。政治家たちは、政府債務に関する誤った理解によって行動している場合が多い。そうした政治家たちは、MMTの旗手であるステファニー・ケルトンの著書『財政赤字の神話』(邦訳・早川書房)を読めば、認識が変わるかもしれない。

ケルトンによると、アメリカの歴史上、政府債務がとりわけ大幅に縮小した6回のケースでは、その直後に深刻な景気後退に陥っているという。1990年代後半にクリントン政権が財政赤字削減を推し進めた際も、ドットコム・バブルの崩壊が起きた。

いまアメリカの債務上限問題を報じるニュースは、民主党と共和党がいがみ合い、国の財政を危うくしていると伝えている。だが、真の問題は別の所にある。ケルトンの言葉を借りれば、「是正すべきなのは債務ではなく、私たちの考え方」なのだ。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

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