コラム

米ロ首脳会談の勝者はプーチンか、バイデンか

2021年07月03日(土)16時21分

ロシア国内では、プーチンの足元を揺るがす事態が進行している。首都モスクワでは先週、新型コロナの感染急拡大を受け、全ての公共施設が閉鎖された。2017年の世論調査では、59%のロシア人が信頼する政治家としてプーチンを挙げていたが、現在は20%台に落ち込んでいる。

自国の大統領が再び世界で存在感を示し、米大統領と握手を交わし、独仏の首脳も会談を要請──そんな強い指導者のイメージは9月の議会選挙で有利に働くはずだ。

毎年、プーチンが国外メディアと会見するバルダイ・クラブ(シンクタンクかつ国際討論フォーラム)でプログラムディレクターを務めるアンドレイ・スシェントフは、「(ロシアの)エリート層の間ではアメリカとの和解がもたらすかもしれない成果に対して根強い懐疑論がある」と言う。「プーチンは懐疑派を説得するために、彼の政治的資本の動員を強いられるかもしれない。もっとも、アメリカを敵対視するロシア人でも緊張の緩和は概して歓迎するだろう。フェアな競争であれば、だが」

対ロシア関係をより予測可能性の高いものにするというバイデン政権の最重要課題を考えると、今回の首脳会談で劇的な展開はあり得なかった。結局、米ロは一時帰国していた大使を帰任させ、サイバーテロと軍備管理に関する対話を続けることに合意し、実質的な相違点は脇に追いやられた。

モスクワ国際関係大学の政治学者アンドレイ・スシェントフは私にこう言った。「両首脳は予想外にオープンに意見を交換した。少なくとも、双方が互いをプロとして尊重する機運を高める場としては役に立っただろう。しかし、行き詰まりを打開するには不十分だ。重要なのは、合意された内容の実行能力と検証。両国関係に進展があるかどうかは、今後半年間で見えてくる」

この首脳会談の評価は、これから何が起きるかを見てから決めても遅くない。

プロフィール

サム・ポトリッキオ

Sam Potolicchio ジョージタウン大学教授(グローバル教育ディレクター)、ロシア国家経済・公共政策大統領アカデミー特別教授、プリンストン・レビュー誌が選ぶ「アメリカ最高の教授」の1人

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米下院、貧困や気候問題の支出削減法案 民主党反対 

ワールド

米FRB議長がコロナ感染、自宅から仕事継続

ビジネス

グローバル株ファンドに資金流入、米利下げ期待受け=

ワールド

米財務長官、ロシア凍結資産活用の前倒し提起へ 来週
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた異常」...「極めて重要な発見」とは?

  • 2

    存在するはずのない系外惑星「ハルラ」をめぐる謎、さらに深まる

  • 3

    「円安を憂う声」は早晩消えていく

  • 4

    無名コメディアンによる狂気ドラマ『私のトナカイち…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 7

    中国のホテルで「麻酔」を打たれ、体を「ギプスで固…

  • 8

    他人から非難された...そんな時「釈迦牟尼の出した答…

  • 9

    「香りを嗅ぐだけで血管が若返る」毎朝のコーヒーに…

  • 10

    「EVは自動車保険入れません」...中国EVいよいよヤバ…

  • 1

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 2

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 3

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 4

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 5

    エジプトのギザ大ピラミッド近郊の地下に「謎めいた…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史…

  • 10

    地下室の排水口の中に、無数の触手を蠢かせる「謎の…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 8

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story