Picture Power

【写真特集】カシミールの天空を走る新鉄道 めくるめく絶景の鉄旅とインドの軍事戦略

Train Connection

Photographs by Jelle Krings

2025年11月11日(火)16時59分
係争地

新路線でカシミール観光に向かうインド人夫婦。ヒマラヤの絶景を楽しめるよう座席は窓に面した方向に回転できる

<ヒマラヤの絶景を堪能する列車の旅が売りのインドの新路線。川面から359メートルの高さに架けられたチェナブ橋は、「世界一高い鉄道橋」としてギネス世界記録に認定された。政府が強調するカシミールの地域経済活性化計画の裏側にある、印・パの係争地の統制強化>

長年、印パの領有権抗争が続くカシミール地方のインド支配地域にはこれまで、高額な空路か、通行止めが頻発する山間部の陸路でしかアクセスできなかった。だが今年6月、インド北部とカシミール渓谷の中心都市スリナガルなどを結ぶ新たな鉄道路線が開通。首都ニューデリーからカシミールに鉄道でアクセスすることが可能になった。

ヒマラヤを貫き、36のトンネルと943の橋を通る全長272キロの新路線は傑出した技術力のたまものだと、モディ政権は胸を張る。さらに、観光客誘致や雇用創出を通して地域経済活性化の起爆剤になるとも強調している。

だが地元住民の受け止め方は異なる。カシミールはインドで唯一、イスラム教徒が多数を占める地域だ。独自の文化と言語を必死で守ってきた人々の目には、鉄道の敷設はインドによる軍事的支配と文化的同化の象徴と映る。

今年4月のテロを機に印パの武力衝突が再燃して以降、カシミールではインド治安部隊の人員や軍備が一段と増強されている。そんななかで開通した新路線は、地域の微妙な均衡を崩す最後の一押しになるかもしれない。

カシミールへの玄関口となるジャンムー・タウィ駅

カシミールへの玄関口となるジャンムー・タウィ駅


次ページ:<フォト・ルポルタージュ>カシミールの天空を走る新鉄道 めくるめく絶景の鉄旅とインドの軍事戦略

Photographs by Jelle Krings-Panos
撮影:イェレ・クリングス
1989年、オランダ生まれの写真家、マルチメディア・ジャーナリスト。戦争、移民、気候変動、地政学的な問題など大規模なテーマを、人物やコミュニティーに焦点を当てながら、人間的な視点から描く。英ガーディアン紙、米CNNなどの主要メディアで活躍

【連載21周年】Newsweek日本版 写真で世界を伝える「Picture Power」2025年10月21日号掲載

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏、米特使らと電話会談 「誠実に協力し

ワールド

小泉防衛相、中国軍のレーダー照射を説明 豪国防相「

ワールド

ガザ交渉「正念場」、仲介国カタール首相 「停戦まだ

ワールド

中国、香港の火災報道巡り外国メディア呼び出し 「虚
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 6
    「搭乗禁止にすべき」 後ろの席の乗客が行った「あり…
  • 7
    仕事が捗る「充電の選び方」──Anker Primeの充電器、…
  • 8
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 9
    ビジネスの成功だけでなく、他者への支援を...パート…
  • 10
    『羅生門』『七人の侍』『用心棒』――黒澤明はどれだ…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺るがす「ブラックウィドウ」とは?
  • 3
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」が追いつかなくなっている状態とは?
  • 4
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 5
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 6
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 7
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 8
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙す…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story