Picture Power

伝説の写真家が遺した人間の詩

Tribute to Legendary Photographer

Photographs by DENNIS STOCK

伝説の写真家が遺した人間の詩

Tribute to Legendary Photographer

Photographs by DENNIS STOCK

ジェームズ・ディーンとは、彼がスターになる前からの友人で、この「夢破れた大通り」は55年に雑誌に掲載された

 雨の降るニューヨークのタイムズスクエアを、くわえたばこで肩をすくめ、重い足取りで歩く孤独感に満ちた男性。伝説のハリウッド俳優ジェームズ・ディーンを写したこのポートレートは、「夢破れた大通り」と呼ばれる。

 写真家デニス・ストックのこの作品が発表されてすぐ、ディーンは交通事故でこの世を去った。しかし1人の人間としてのディーンを切り取った写真は、死後もさまざまなところで掲載された。ストックの作品は、ディーンの伝説を不滅にする1枚となった。

 ストックは51年、写真家集団マグナム・フォトに参加し、数多くの印象的な写真を残してきた。例えばミュージシャンに密着し、ざらついた空気に満ちたアメリカのジャズ文化の活力を、音楽を聴かせずに見事に表現してみせた。60年代後半には、愛と平和で社会を再形成しようとカリフォルニア州で始まったヒッピー・ムーブメントをリアルに切り取った。「いい写真は十中八九、詩的だ」と、彼は語っている。

 1月11日、ストックは81年の生涯を閉じた。彼もまた、ディーンを伝説に変えたタイムズスクエアでの写真によって、伝説の写真家として歴史にその名を残すことになった。

Photographs by Dennis Stock-Magnum Photos Tokyo
         
2010年2月3日号掲載

MAGAZINE
特集:日本時代劇の挑戦
特集:日本時代劇の挑戦
2025年12月 9日号(12/ 2発売)

『七人の侍』『座頭市』『SHOGUN』......世界が愛した名作とメイド・イン・ジャパンの新時代劇『イクサガミ』の大志

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 2
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させられる「イスラエルの良心」と「世界で最も倫理的な軍隊」への憂い
  • 3
    高市首相「台湾有事」発言の重大さを分かってほしい
  • 4
    【クイズ】アルコール依存症の人の割合が「最も高い…
  • 5
    「ボタン閉めろ...」元モデルの「密着レギンス×前開…
  • 6
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 7
    左手にゴルフクラブを握ったまま、茂みに向かって...…
  • 8
    ロシアはすでに戦争準備段階――ポーランド軍トップが…
  • 9
    主食は「放射能」...チェルノブイリ原発事故現場の立…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    7歳の息子に何が? 学校で描いた「自画像」が奇妙すぎた...「心配すべき?」と母親がネットで相談
  • 2
    100年以上宇宙最大の謎だった「ダークマター」の正体を東大教授が解明? 「人類が見るのは初めて」
  • 3
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%しか生き残れなかった
  • 4
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 5
    128人死亡、200人以上行方不明...香港最悪の火災現場…
  • 6
    【銘柄】関電工、きんでんが上昇トレンド一直線...業…
  • 7
    【クイズ】世界遺産が「最も多い国」はどこ?
  • 8
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 9
    【クイズ】17年連続でトップ...世界で1番「平和な国…
  • 10
    日本酒の蔵元として初の快挙...スコッチの改革に寄与…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 4
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 5
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸…
  • 6
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 7
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 8
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中