コラム

群馬ファンの僕がメディアに言いたいこと(パックン)

2021年11月30日(火)17時00分

草津温泉などの観光名所も多い群馬県だが… kuppa_rock/iStock.

<群馬県知事が異議申し立てをした「都道府県魅力度ランキング」でなぜ魅力を測ることはできないのか、そしてメディアの取り上げ方が問題とは?>

都道府県の魅力度ランキングで群馬県は44位

相方マックンの出身地でもある群馬県に何度も訪れたことのある僕は、その情報を聞いて驚いた。群馬の山も街も歩いている。群馬の温泉にも入っている。群馬の名物も食べているし、相方の家族も含めて何人もの群馬人と交流している。群馬通とまではいかなくてもかなり詳しいほうだと思う。そこで思った。全都道府県の中で魅力が44位だと?!高すぎるだろう!

芸風の一つとして、こうやって軽く群馬をバカにすることは多い。でも本音じゃないよ。群馬のみなさん、炎上させたりしないでください!まあ、そんな心配もないだろうね。群馬にはインターネットもないし。......すみません。悪い癖だ。

少し前に話題になった魅力度ランキングだが、この騒動からは日本のメディアの大きな欠点が見える。永遠の課題といえるものだ。

テレビやネットニュースなどでこの話題は「魅力度ランキング発表!ベストは?ワーストは?」などと紹介されることが多かった。そしてほとんどのメディアは、そのランキングはどこの機関がどうやって調べたものなのかなど、大事な「根拠」が印象に残らない、「魅力度」だけのインパクトが残る報じ方だった。もちろん、メディアリテラシーのエリートであるこのコラムの読者は「根拠」はご存じだろうけどね。

「魅力」を測る仕組みに問題が

でも、念のためにはっきりさせよう。このランキングは、「ブランド総合研究所」という民間企業が3万5000人に取ったオンラインアンケートの一部だ。「地域に対する評価」を5段階で記してもらい、それぞれの地域の点数でランキングを決めたものだ。

では、何が問題か?なによりもネーミングだ。大辞泉によると、「魅力」は「人の心をひきつけて夢中にさせる力」と定義される。ランダムに選ばれたネットユーザーに各都道府県のその度合いを図る資格はあるのだろうか?

行ったこともない、とりたてて詳しくもない地域を評価しろと頼まれてもかなり困るのではないか?各都道府県におそらく10回以上行っていて、海外旅行の経験も豊富で、世界各地の魅力を体験している僕でも、都道府県の魅力を図る基準にはされたくない。勉強不足で魅力を見落としてしまって、どこかの地域のイメージに傷が付いたら本当に申し訳なく思う。群馬県ならかまわないけどね、そもそも傷つくほどのものがないし......。

あ、ウソです!ごめんなさい!法的措置はやめてください!

プロフィール

パックン(パトリック・ハーラン)

1970年11月14日生まれ。コロラド州出身。ハーバード大学を卒業したあと来日。1997年、吉田眞とパックンマックンを結成。日米コンビならではのネタで人気を博し、その後、情報番組「ジャスト」、「英語でしゃべらナイト」(NHK)で一躍有名に。「世界番付」(日本テレビ)、「未来世紀ジパング」(テレビ東京)などにレギュラー出演。教育、情報番組などに出演中。2012年から東京工業大学非常勤講師に就任し「コミュニケーションと国際関係」を教えている。その講義をまとめた『ツカむ!話術』(角川新書)のほか、著書多数。近著に『パックン式 お金の育て方』(朝日新聞出版)。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ウクライナ軍、東部戦線で反攻作戦を展開=ゼレンスキ

ワールド

プーチン氏が増税示唆、戦時中は「合理的」も 財政赤

ワールド

全国CPI、8月は前年比+2.7%に鈍化 補助金や

ワールド

トランプ氏、TV局の免許剥奪を示唆 批判的な報道に
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 6
    アジア作品に日本人はいない? 伊坂幸太郎原作『ブ…
  • 7
    ケージを掃除中の飼い主にジャーマンシェパードがま…
  • 8
    「ゾンビに襲われてるのかと...」荒野で車が立ち往生…
  • 9
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 10
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる」飲み物はどれ?
  • 4
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の…
  • 9
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 10
    電車内で「ウクライナ難民の女性」が襲われた驚愕シ…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 5
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story