コラム

この株価暴落はブラックマンデー2.0だ

2018年02月07日(水)07時47分

歴史的な株価暴落の後、2月6日のNY株は反発したが Brendan McDermid-REUTERS

<「米景気好調による長期金利の上昇が原因のいい下落」という先週末の解説は誤りだった。ダウは2万ドルの下値を目指す>

ブラックマンデー2.0だ。

世界中で株式が大暴落。米国は2月5日月曜日、ダウ平均が1175ドル下落し、史上最大の下落幅となった。日本では、月曜日(日本時間なので米国より先に)592円日経平均が下落していた。そして、米国ダウ1175ドル安を受けて、日本は6日火曜日13時50分、2万1千78円まで下がり1609円安を記録した。

日経平均は、引け際に急速に戻し、15時00分に1071円安の21,610円で終わったが、先物はその後の10分でもう一度下がり21450円となり、結局15時15分、21510円で終わった。

ただ、今週突然起きたわけではなく、先週から下落は始まっており、2月2日金曜日、米国ダウは666ドル安の大暴落だった。666ドルは不吉だとも言われたが、アナリストなどの市場関係者の多くは、これは米国の景気好調からの長期金利上昇によるものだから、仕方がない。むしろ健全な調整で、ここから再度上がっていく、という見方だった。さらに、円高が進まなかったのもリスクオフではない証拠、ということで、誰も下落は続かないと思っているようだった。私が土曜日の朝のテレビ出演で、これは転換点、米国株は暴落するとコメントしても誰も相手にしなかった。

やはりメルトダウンはきた

しかし、先週金曜日の下げは米国長期金利の上昇が理由だったが、月曜日の1175ドルの下げは、米国長期金利の急落を伴い、円は急騰し、完全なリスク回避の動きとなった。先週の解釈は間違っていたのである。

つまり、先週金曜日の下落は何の理由もない下落なのである。景気は良い、企業業績はよい、地政学リスクは小さい、適温経済どころか、良すぎる経済なのである。だからこそ下落した、というよりは、何の理由もなく下落した、というのが正しい。そして、今週月曜日の下落も同様に、理由はない下落だ。

これは、1987年のブラックマンデーと同じであり、ダウの昨日の暴落も月曜日だから、ブラックマンデー2.0と私は名づけた。

ただし、厳密に言えば、暴落の明確な理由はある。それは、暴騰しすぎたからである。上がったから下がった。それだけなのである。

実は、暴落が起こる半分のケースは上がったから下がる、というものである。1月以降急激に上昇スピードが高まり、「メルトアップ」という表現が流布するまでになった。これは、メルトダウンの逆で、上昇が加速している現象を差すものであり、その後にはメルトダウンが待っている、ということを示唆したものである。

ところが、この言葉を作り出した、いわゆるマーケット関係者たちは、今回はメルトアップのあとも下落しないとのたまっていた。なぜなら、過去のメルトアップのあとのメルトダウンは、景気減速局面にあったからであり、景気が減速しない今なら下落することはないと。

プロフィール

小幡 績

1967年千葉県生まれ。
1992年東京大学経済学部首席卒業、大蔵省(現財務省)入省。1999大蔵省退職。2001年ハーバード大学で経済学博士(Ph.D.)を取得。帰国後、一橋経済研究所専任講師を経て、2003年より慶應大学大学院経営管理研究学科(慶應ビジネススクール)准教授。専門は行動ファイナンスとコーポレートガバナンス。新著に『アフターバブル: 近代資本主義は延命できるか』。他に『成長戦略のまやかし』『円高・デフレが日本経済を救う』など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

米中首脳、来月の直接会談で合意 TikTok交渉で

ワールド

米共和有力議員、トーク番組休止で異例の批判 「まる

ワールド

トランプ氏のNYT名誉棄損訴訟却下、訴状が冗長で不

ワールド

米大統領令、高度専門職ビザに10万ドル申請料 ハイ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分かった驚きの中身
  • 2
    【動画あり】トランプがチャールズ英国王の目の前で「不敬行為」? ネットでは非難轟轟、真相は?
  • 3
    筋肉はマシンでは育たない...器械に頼らぬ者だけがたどり着ける「究極の筋トレ」とは?
  • 4
    「ミイラはエジプト」はもう古い?...「世界最古のミ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    【クイズ】21年連続...世界で1番「ビールの消費量」…
  • 7
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 8
    トランプに悪気はない? 英キャサリン妃への振る舞い…
  • 9
    「より良い明日」の実現に向けて、スモークレスな世…
  • 10
    漫画やアニメを追い風に――フランス人が魅了される、…
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「何だこれは...」クルーズ船の客室に出現した「謎の物体」にSNS大爆笑、「深海魚」説に「カニ」説も?
  • 3
    数千円で買った中古PCが「宝箱」だった...起動して分かった驚きの中身
  • 4
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 5
    【動画あり】トランプがチャールズ英国王の目の前で…
  • 6
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 7
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 8
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、…
  • 9
    腹斜筋が「発火する」自重トレーニングとは?...硬く…
  • 10
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果…
  • 6
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 7
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 8
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 9
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
  • 10
    「怖すぎる」「速く走って!」夜中に一人ランニング…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story