最新記事
シリーズ日本再発見

日本人が「税金」に無頓着すぎる理由

2022年10月13日(木)10時25分
高野智宏
日本人

ooyoo-iStock.

<どんな税金を払っているか、その税金は何に使われているか。例えば10月1日にはたばこ税の増税もあったが、日本人は総じて税金に対する意識があまりにも低い>

国が違えば、税制も違う。肥満防止を目的としたハンガリーの「ポテトチップス税」やロンドン中心部の渋滞緩和を目的としたイギリスの「渋滞税」。

さらに、アメリカのウェストバージニア州の、銃犯罪など凶悪犯罪の抑制を目的に花火や銃のおもちゃに対して税を課す「光るおもちゃ税」などなど、世界には知られざる、そして、なんともユニークな税制が存在している。

日本にもそんなユニークな税制があれば違ったのかもしれないが、大半のビジネスマンが各人でタックスリターン(確定申告)を行うアメリカなどと比べ、私たち日本人の税金に対する意識は総じて低い。

どんな税金を払っているか、その税金は何に使われているか――。これらをよく分かっていない日本人は多いだろう。

その理由はやはり、毎月給料から源泉徴収として天引きされ、年末にはこれまた自動的に年末調整されることで、所得税と住民税の納税が申告なしに完結してしまうからなのか。

「それが一番の理由ですが、もうひとつ大きな要因があります」と言うのは、やさか税理士法人大阪支社に所属する税理士であり、税金の仕組みを身近な例で分かりやすく解説した『あなたが払う税金はざっくり言ってこれくらい』(清文社)の著書を持つ税理士、磯山仁志氏だ。

磯山氏が続ける。

「教育です。義務教育はもちろん、高等教育においても税金に関する教育が十分になされていないことです。納税は日本人の3大義務のひとつであるにもかかわらず、教育機関で税金について学ぶ機会は非常に少ない」

「私のクライアントの中小企業の経営者であっても、『自分の役員報酬を月額20万円上げると、そんなに(払う)税金が上がるの!?』と驚かれるなど、税率はもちろんのこと、所得税の超過累進課税制度自体を理解していない方が大半ですから」

筆者自身、振り返っても確かに学校で税金の授業があった記憶もなければ、超過累進課税制度自体を知ってはいても、その税率はと聞かれれば無言にならざるを得ない。言い訳ではないが、日本人の税に関する知識は、税金や経理を専門とする人たち以外は誰もがその程度ではないだろうか。

一般の人が「税金を納めていること」を意識する瞬間と言えば、買い物時に発生する消費税や、ガソリン税、酒税、たばこ税など購入の都度、事業者に支払う間接税を支払うときが、最も可能性が高いかもしれない。

しかし、それらについても、その用途はと問われれば誰もが答えに窮するのだろうが......。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ガザ休戦交渉、イスラエルの条件修正が暗礁原因=ハマ

ビジネス

アングル:4月CPI、利下げに向け物価情勢好転待つ

ワールド

米、ウクライナ防衛事業基金に20億ドル ロシア領内

ワールド

米、今秋に中国製「つながる車」規制案 商務長官「安
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:インドのヒント
特集:インドのヒント
2024年5月21日号(5/14発売)

矛盾だらけの人口超大国インド。読み解くカギはモディ首相の言葉にあり

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両を一度に焼き尽くす動画をウクライナ軍が投稿

  • 2

    プーチン5期目はデフォルト前夜?......ロシアの歴史も「韻」を踏む

  • 3

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダブルの「大合唱」

  • 4

    マーク・ザッカーバーグ氏インタビュー「なぜAIを無…

  • 5

    それでもインドは中国に勝てない...国内企業の投資意…

  • 6

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    羽田空港衝突事故で「日航の奇跡」を可能にした、奇…

  • 9

    総額100万円ほどの負担増...国民年金の納付「5年延長…

  • 10

    奇跡の成長に取り残された、韓国「貧困高齢者」の苦悩

  • 1

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 2

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する悲劇の動画...ロシア軍内で高まる「ショットガン寄越せ」の声

  • 3

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋戦争の敗北」を招いた日本社会の大きな弱点とは?

  • 4

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 5

    原因は「若者の困窮」ではない? 急速に進む韓国少…

  • 6

    北米で素数ゼミが1803年以来の同時大発生、騒音もダ…

  • 7

    「恋人に会いたい」歌姫テイラー・スウィフト...不必…

  • 8

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    ウクライナ防空の切り札「機関銃ドローン」、米追加…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 7

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中