最新記事
シリーズ日本再発見

日本に観光に来た外国人がどこで何をしているか、ビッグデータが明かします

2016年08月19日(金)11時12分
西山 亨

japan160819-2.jpg

「インバウンドインサイト」有料のPROプランの画面。ポイントデータのマップや投稿データの内容などを見ることができる

「インバウンドインサイト」には、ヒートマップで基本的な外国人動向を閲覧できる「無料プラン」もあるが、月額10万円の有料プランも3種類用意されている。前述のSNS解析が可能な「PROプラン」、NTTドコモの基地局アクセスログを高精度に統計課して国籍別の滞在分布地図や人数の推移を提供する「統計データプラン」、宿泊金額データやカテゴリー別の推定消費金額などを解析して提供する「訪日消費データプラン」と、それぞれ特徴のあるデータを組み合わせて利用できるため、訪日外国人の動向をより多方面から調査できるサービスとなっている。

「私たちが提供しているのは、インバウンド戦略の精度を高めるためのエビデンスとなるデータです」と石川さんが話すように、売り上げ向上などの効果をダイレクトに生み出すものではない。実際、各企業や自治体の使い方次第という側面はあるだろう。しかし、どの国のどんな人たちが、日本のどこへ行って、何を感じて、どんな消費行動をしているかが分かるだけでもインバウンド対策に役立つことは言うまでもない。

自分の店の近くのWi-Fiユーザーに情報発信

 一方、訪日外国人の動向を知ることができるだけでなく、彼らに対して直接アクションを起こせるサービスも注目を集めている。KDDIのグループ会社ワイヤ・アンド・ワイヤレスが提供する「TRAVEL JAPAN Wi-Fi」である。

 ワイヤ・アンド・ワイヤレスはKDDIグループにおける公衆Wi-Fi専門の通信事業者で、auのユーザーが無料で利用できるWi-Fiや、有料の公衆無線LANサービスであるWi2 300は同社が展開しているものだ。同社の南 昇・取締役副社長が「TRAVEL JAPAN Wi-Fi」を立ち上げた経緯を語ってくれた。

「日本に旅行で来る外国人にとっての"3大困りごと"が、言語、交通、通信といわれています。通信では、外国人が利用できるフリーWi-Fiが整備されてないことが常に問題視されていたため、インバウンド市場向けにWi-Fiサービスを提供しようと考えました」

 ユーザーとなる訪日外国人が「TRAVEL JAPAN Wi-Fi」のアプリをスマートフォンなどにダウンロード。その際、使用目的を掲示し、アクセスポイント接続時の位置情報などの取得に同意してもらう。アプリがダウンロードされた端末は、アクセスポイントに近づくと自動的にWi-Fiにつながる。その位置情報などから解析した行動データをレポートとして顧客企業に提供することで、ワイヤ・アンド・ワイヤレスは対価を得る。その代わりに訪日外国人は無料でWi-Fiを利用できるという仕組みだ。

【参考記事】訪日外国人の胃袋をつかむ「食」のマッチングサービス

japan160819-3.jpg

「TRAVEL JAPAN Wi-Fi」アプリの画面。自分がいる場所の配信コンテンツがタイムラインとして表示されている

 訪日外国人の位置情報はアクセスポイントから得られるが、ユーザーがGPSによる位置情報の取得をONにしていれば、アクセスポイントが少ない地方でも訪日外国人の行動データを収集・解析できる。レポートはヒートマップで表示され、日本全国どの場所でも曜日や時間、国籍を指定しての表示が可能だ。

 先ほど「直接アクションを起こせる」と書いたが、「TRAVEL JAPAN Wi-Fi」の収益源は行動データだけではない。訪日外国人ユーザーに対して、位置情報連動のコンテンツをプッシュ配信(英語、簡体字、繁体字など5言語に対応)できる点も大きな特長となっている。例えば、午前中に銀座に買い物に来ている中国人に対して銀座周辺のランチ情報を一斉に配信できる。

「着信に気付いた人は、『TRAVEL JAPAN Wi-Fi』からの有益な情報であることが分かるため、開封し閲覧される確率はかなり高いことが分かっています。このようなコンテンツ配信も広告媒体として利用していただいています」と、南さんは企業側のメリットを語った。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

再送-イスラエル、ガザ南部で軍事活動を一時停止 支

ワールド

中国は台湾「排除」を国家の大義と認識、頼総統が士官

ワールド

米候補者討論会でマイク消音活用、主催CNNが方針 

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年1月以来の低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「珍しい」とされる理由

  • 2

    森に潜んだロシア部隊を発見、HIMARS精密攻撃で大爆発...死者60人以上の攻撃「映像」ウクライナ公開

  • 3

    屋外に集合したロシア兵たちを「狙い撃ち」...HIMARS攻撃「直撃の瞬間」映像をウクライナ側が公開

  • 4

    メーガン妃「ご愛用ブランド」がイギリス王室で愛さ…

  • 5

    米モデル、娘との水着ツーショット写真が「性的すぎ…

  • 6

    FRBの利下げ開始は後ずれしない~円安局面は終焉へ~

  • 7

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 8

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 9

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 10

    「ノーベル文学賞らしい要素」ゼロ...「短編小説の女…

  • 1

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 2

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 3

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 4

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…

  • 5

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 6

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 7

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 8

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 9

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 10

    この「自爆ドローンでロシア軍撃破の瞬間」映像が「…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 4

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 5

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 6

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 7

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 8

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 9

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中