コラム

規制緩和の進む電動キックボード、「二輪」よりも日本に必要なのは

2022年02月16日(水)14時50分

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ベルリンの路上で乗り捨てられていた電動キックボード 筆者撮影

欧州では環境問題への関心が高く、中心部のクルマの台数を減らそうという意識が社会で共有されている。カーシェア、自転車シェア、電動キックボードのシェアによって自家用車に代わる移動手段の選択肢が増え、街が活性化する方がメリットが大きいと考えている。

欧州には電動キックボードを受け入れる素地が日本よりもあった。

電動キックボードは自転車のような低速モビリティとして認識され、速度と年齢に条件を設けられているが、免許・ミラー・ナンバープレート・ヘルメットなど日本で必要とされるものがなくても乗れる国もある。

警察庁や関係府省、有識者委員によって構成される「多様な交通主体の交通ルール等の在り方に関する有識者検討会」の中間報告書(令和3年4月)によると、ドイツでは利用するにあたって運転免許は不要とされている。「運転特性及び道路交通における捉えられ方が自転車に酷似している」というのがその理由だ。ただし、運転特性の似た電動アシスト自転車(eBike)と同じように14歳以下の運転は認めていない。フランスでも12歳以下の運転は認められていないものの、やはり運転免許は不要だ。

また道路の使い方も国によって異なり、日本はモータリゼーションとともにクルマ以外の移動手段が車道から歩道へと追いやられていったが、欧州では自転車は車道に残り、その走行空間がクルマのように整備されている国も多い。

バルセロナ、ベルリン、ウィーン、コペンハーゲンは自転車の走行空間がコロナ前から整備されていて、遅れていたパリもコロナ禍と2024年に開催されるオリンピック・パラリンピックに向けて急激に整備が進んでいる。「自転車都市」として知られるアムステルダムやコペンハーゲンでは、モペットや電動車いすも自転車レーンを走っていた。歩道を走る自転車は見かけなかった。

議員や関係省庁とともに

日本では速度ではなく車両で区分されていて、電動キックボードは原動機付自転車に当てはまる。そのため免許が必要となり、その普及にとって大きな障壁となっていた。

これらの問題に果敢に挑んでいる中心人物がLuup(ループ)の岡井大輝代表だ。「ウーバーの介護版」を作ろうとしていたが、マイクロモビリティに着目し始めた。Luupは"街じゅうを「駅前化」するインフラをつくる"をミッションに、電動・小型・一人乗りの電動マイクロモビリティを幅広く取り扱い、マイクロモビリティのシェアリングサービスを展開している。国内の電動キックボード事業者とともにマイクロモビリティ推進協議会を立ち上げ、国会議員で構成されたMaaS議員連盟マイクロモビリティPTや関係省庁と勉強を重ねてきた。

プロフィール

楠田悦子

モビリティジャーナリスト。自動車新聞社モビリティビジネス専門誌『LIGARE』初代編集長を経て、2013年に独立。国土交通省の「自転車の活用推進に向けた有識者会議」、「交通政策審議会交通体系分科会第15回地域公共交通部会」、「MaaS関連データ検討会」、SIP第2期自動運転(システムとサービスの拡張)ピアレビュー委員会などの委員を歴任。心豊かな暮らしと社会のための、移動手段・サービスの高度化・多様化とその環境について考える活動を行っている。共著『最新 図解で早わかり MaaSがまるごとわかる本』(ソーテック社)、編著『「移動貧困社会」からの脱却 −免許返納問題で生まれる新たなモビリティ・マーケット』(時事通信社)、単著に『60分でわかる! MaaS モビリティ革命』(技術評論社)

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