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コロナがパリにもたらした自転車ブームで、「コンパクトなオリパラ」に説得力
このような背景があり、2014年に当選したパリのアンヌ・イダルゴ市長は、徒歩や自転車で生活できる街を選挙公約に掲げていた。クルマをなかなか捨てられないパリだったが、コロナ禍を機に交通改革が一気に進んだ。
パリ在住の日本人いわく「パリ市内はクルマの速度が30km/hに制限され、クルマを使うよりも自転車やトロチネット(キックボード)の方が速いかもしれない。自転車の需要がさらに増えている。日曜日はシャンゼリゼ大通りが交通規制され、歩行者天国になっている」という。
自転車シェアリング「Vélib'(ヴェリブ)」はこれまで一般的な自転車のみだったが、電動の自転車も加わった。また、Uberも自転車やトロチネット(キックボード)の貸し出しに参入し、以前より選択肢が増えている。
またEVカーシェアリング「Autolib'(オートリブ)」は「Mobilib'(モビリブ)」に名称を変えたが、パリ市は徒歩や自転車の活用を推奨しているため、以前より目立った活用はされていないようだ。
オリパラに向け、パリで進むさらなる計画
パリ市は、大会期間中の移動手段の20%以上を自転車で確保するという。
会場と地域を結ぶ「2024サイクリングループ(Le boucles cyclables)」、パリを横断する「エクスプレス自転車ネットワーク(Le Réseau express vélo)」などの整備を進めている。さらには「2020-2026自転車計画」をつくり、公共交通、自転車の利用を促進するため、地区ごとに歩行者と自転車を優先する通り(vélorue、自転車通り)やゾーン30をつくり、利用者が緑を楽しめるネットワークを計画している。セーヌ川の水質を改善させ、泳げるようにする計画まで立てている。
自転車をまちづくりに活用する動きはパリだけではなく、世界的な傾向だ。環境や交通問題の解決策としてクルマの中心市街地への侵入を制限し、日本同様に公共交通の老朽化やドライバー不足に頭を抱える都市にとって、道路空間の使い方を見直し、徒歩や自転車で暮らせて賑わいのある街を構築できれば、非常に合理的だからだ。日本と比較されやすいイギリス、ドイツ、アメリカでも同様の傾向にある。
日本では高齢者の免許返納問題、公共交通の維持やドライバー不足が大きな問題となっている。パリに倣うとすれば、日本でもまずは車いすを含む徒歩と自転車で暮らせる街の再構築を軸に据え、そこに公共交通の活用やクルマ移動を組み合わせる形を検討してみてはどうだろうか。

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