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井ノ原快彦アイランド社長も難色を示していた「NGリスト」...配布の強行と失敗はとても「日本的」だった
しかし、ジャニーズ事務所が明示的にNGは駄目だと言っていたにもかかわらず、コンサル側がクライアントの意に反してNGリストの運用を強行することがあるのだろうか。いったい何があったのか。
FTIは1982年にアメリカで設立され、証拠の収集解析など「フォレンジック」と呼ばれる訴訟支援業務を行う会社だった。
96年にニューヨーク証券取引所に上場した後、豊富な資金を元に世界中でM&Aを行い、不正調査に限らず、金融・経営戦略からIT・広報に至る多くの部門を抱える巨大コンサルティング企業に成長。現在の従業員数は7800人、世界84都市に拠点を構え、2022年の売上額は30億ドル(約4500億円)に達している。
FTIは06年7月、香港のリスク管理アドバイザリー企業「インターナショナルリスク」を買収することでアジア・日本進出を果たした。
こういった経緯から、FTI日本法人の業務は、私がディレクターとして在籍していたグローバルリスク&インベスティゲーション部門が主であり、グローバル企業に対するリスク助言や不正調査(デューデリジェンス)を行っていた。
そのFTI日本法人に最近加わったのが、PR会社ボックスグローバル・ジャパンの代表取締役社長だった野尻明裕氏である。
報道によると、ボックス社は今年6月の段階で弁護士を通じてジャニーズ事務所から会見運営業務を受託しており、8月29日の林眞琴前検事総長率いる再発防止特別チームによる会見も手がけたという。
野尻氏が6月末にボックス社を退社しFTIに移籍した後も案件が継続されたのは、コンサル業界特有の属人性ゆえであり、ジャニーズ案件はいわば「移籍の手土産」として持ち込まれた側面もあるだろう。
しかしボックス社と異なり、FTI日本法人はメディア対応の経験が豊富というわけではない。実際、「指名」を誤植した写真付き「氏名NGリスト」を記者会見当日に作成し、コンビニでコピー、LINEで共有するほど、その運営は稚拙だった。
なるほどFTI本社には戦略的コミュニケーションという強力な広報部門がある。しかし野尻氏の指示を受け、会見実務を取り仕切った日本法人の実働部隊の人員・実力などリソースは十分でなかった。
その齟齬が業務監督上の油断を生み、NGリスト問題を招いた可能性が高い。よもやNGリストが表面化するという、ささやかに見えて重大な失敗が生じるとは、野尻氏自身も想定していなかっただろう。
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