コラム

死者700万人、コロナ緊急事態終了...「本当の終息は、次のパンデミックが始まった時」の意味

2023年05月06日(土)15時01分

「異なる国を比較するのは公平ではない」

英サウサンプトン大学のマイケル・ヘッド上級研究員(国際保健)は「コロナの脅威が鈍化した重要な要因の一つはワクチン接種プログラムがもたらした驚くべき効果だった。ワクチンによって導入初年度に1500万~2000万人の命が救われたと推定される。誤情報の拡散に固執する少数の人々にもかかわらず、世界的なワクチン摂取率は素晴らしい」と解説する。

「コロナを日常的に繰り返し発生するエンデミックとして扱うかどうかは国によって判断が分かれる」と元WHOのヘイマン氏は言う。英国では21年8月に早くもエンデミックに格下げされたが、日本はコロナの感染症法上の位置づけについて今月8日に季節性インフルエンザなどと同じ「5類」に移行する。

ワクチン接種と自然感染による集団免疫の構築を目指した英国はインフルエンザ様疾患サーベイランスやウイルスゲノム解析の体制が整っているとして早期正常化に踏み切った。正常化の時期が英国と高齢者が多い日本で大きく異なったことについて、ヘイマン氏は「国によって事情や環境が異なるため、比較するのは本当に公平ではない」と筆者に語った。

テドロス事務局長は「今、どの国でも一番やってはいけないことは、このニュースを理由に警戒を解き、構築したシステムを解体し、国民にコロナを心配する必要はなくなったというメッセージを送ることだ」と述べた。 次のパンデミックは「もし」ではなく「いつ」起こるか分からない。私たちは米欧と中露の対立が激化する中、次に備える必要がある。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石油需要は長期的に増加、IEA予想「非現実的」=O

ワールド

イスラエル軍、ラファで作戦継続 「人道地区」攻撃は

ビジネス

日経平均は続落で寄り付く、日銀会合前の売り継続

ワールド

米の成長には官民投資が必要、中国の補助金は過剰=米
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:姿なき侵略者 中国
特集:姿なき侵略者 中国
2024年6月18日号(6/11発売)

アメリカの「裏庭」カリブ海のリゾート地やニューヨークで影響力工作を拡大する中国の深謀遠慮

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 2

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名が海水浴中に手足を失う重症【衝撃現場の動画付き】

  • 3

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 4

    カカオに新たな可能性、血糖値の上昇を抑える「チョ…

  • 5

    帰宅した女性が目撃したのは、ヘビが「愛猫」の首を…

  • 6

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 7

    国立新美術館『CLAMP展』 入場チケット5組10名様プレ…

  • 8

    ジブリの魔法はロンドンでも健在、舞台版『千と千尋…

  • 9

    長距離ドローンがロシア奥深くに「退避」していたSU-…

  • 10

    「これが野生だ...」ワニがサメを捕食...カメラがと…

  • 1

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車の猛攻で、ロシア兵が装甲車から「転げ落ちる」瞬間

  • 2

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開するシーン」が公開される インドネシア

  • 3

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思っていた...」55歳退官で年収750万円が200万円に激減の現実

  • 4

    認知症の予防や脳の老化防止に効果的な食材は何か...…

  • 5

    堅い「甲羅」がご自慢のロシア亀戦車...兵士の「うっ…

  • 6

    毎日1分間「体幹をしぼるだけ」で、脂肪を燃やして「…

  • 7

    カラスは「数を声に出して数えられる」ことが明らか…

  • 8

    「クマvsワニ」を川で激撮...衝撃の対決シーンも一瞬…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃が妊娠発表後、初めて公の場…

  • 10

    米フロリダ州で「サメの襲撃が相次ぎ」15歳少女ら3名…

  • 1

    ラスベガスで目撃された「宇宙人」の正体とは? 驚愕の映像が話題に

  • 2

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    「世界最年少の王妃」ブータンのジェツン・ペマ王妃が…

  • 5

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々…

  • 6

    接近戦で「蜂の巣状態」に...ブラッドレー歩兵戦闘車…

  • 7

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃の「マタニティ姿」が美しす…

  • 8

    ニシキヘビの体内に行方不明の女性...「腹を切開する…

  • 9

    早期定年を迎える自衛官「まだまだやれると思ってい…

  • 10

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story