コラム

善意にも限界? ウクライナ難民の受け入れ「終了」を求める英ホスト家庭が続出する訳

2022年08月12日(金)17時56分

ウクライナ難民638万人

ホストに役立つ支援は何かと尋ねたところ、58%がサポートに関するヒントやアドバイスが有用だと答えた。53%が「利用可能な情報やガイダンスの案内を充実させる」、50%が「ウクライナとウクライナ文化に関する情報を提供する」ことを挙げた。「到着前に電話やオンラインでゲストにもっと連絡を取る」は29%と以外に少なかった。

英国のリチャード・ハリントン難民担当閣外相は英BBC放送に対し「ホストの大半が6カ月以上の受け入れを希望しており、ロシア軍の戦車がウクライナ国境を越えて侵略して以来、英国民がウクライナの人々に示してきた厚意の証しだ」と強調した。しかし6カ月で受け入れを打ち切られたウクライナ難民が行き場を失う恐れは大きい。

7月に発表されたウクライナ難民に関する英上院の報告書では、英国で情報を入手する際の優先言語は64%がウクライナ語で、英語がかなり話せるか流暢なのはわずか34%。さらに家族や親族の呼び寄せ枠の場合、難民への200ポンドの一時金やホストへの月350ポンドの謝金は提供されない。手のかかる子供を抱えた女性の就労支援も十分とは言えないのが現状だ。

ウクライナが南部ヘルソンで反撃を始めたものの「消耗戦」というロシアとの我慢比べが続く戦争の出口は見通せない。米欧側の制裁とロシア側の供給制限で原油・天然ガスの価格は1バレル=90ドル台で高止まりしたままだ。英国のインフレ率は9.4%と40年ぶりの高水準で、10月には12%に達する恐れもある。

国外に逃れたウクライナ難民はポーランドが約127万人、ドイツ約94万人、チェコ約41万人などトータルで約638万人にのぼる。米欧諸国はウクライナへの武器供与だけでなく、協力してウクライナ難民だけでなくホスト国やホストファミリーへの支援を怠るわけにはいかない。この戦争は自由と民主主義をかけた私たちとプーチン氏の我慢比べでもあるのだから。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

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