コラム

メルケル首相のお尻を蹴っ飛ばす「緑の党」バイエルン州議会選で大躍進

2018年10月15日(月)13時00分

バイエルン州議会選で大躍進し、蹴っ飛ばすパフォーマンスを見せるカタリーナ・シュルツ候補(中央、筆者撮影)

[独南部バイエルン州ミュンヘン、ニュルンベルク]10月14日のドイツ南部バイエルン州議会選で、アンゲラ・メルケル独首相を支える地域政党・キリスト教社会同盟(CSU)は大幅に票を減らした。メルケル首相のレームダック(死に体)化がさらに加速しそうだ。

難民街道となったバイエルン

同州議会選の争点は、2015年の欧州難民危機で100万人超の難民を独断で受け入れたメルケル首相の門戸開放政策の是非。それをめぐる極右勢力の台頭、そして戦後続いてきたバイエルン州でのCSU長期政権への飽きだ。今回(15日午前零時現在)と前回2013年州議会選の得票率の変化を見ておこう。

【各党の得票率】
CSU37.2%(前回47.7%)
90年連合・緑の党17.7%(8.6%)
バイエルンの自由な有権者11.7%(9%)
ドイツのための選択肢10.3%
社会民主党(SPD)9.6%(20.6%)
自由民主党(FDP)5%(3.3%)
左派党3.1%(2.1%)

バイエルン州は、自動車メーカーのBMWやアウディ、グローバル複合企業シーメンスに代表される製造業の集積地。CSUは1966年以降13回の州議会選で過半数割れを喫したのは、2008年と今回のわずか2回。好調な経済に支えられ、日本の自民党政権と同じようにCSUの単独政権が続いてきた。

しかし難民街道となったバイエルン州も、反難民・移民を声高に叫ぶ極右政党「ドイツのための選択肢」の嵐に見舞われる。メルケル政権で内相を務めるホルスト・ゼーホーファーCSU党首が「選択肢」に奪われた票を取り返そうと右旋回を始め、難民政策で首相とことごとく対立。

今年7月、ゼーホーファー氏が国境で一部の難民・移民を追い返そうと主張して党首と内相を辞任する意向を表明したため、メルケル政権は崩壊寸前の危機に追い込まれた。

kimura20181015111902.jpg
ゼーホーファー氏(左)が選挙集会に招いたのはメルケル首相ではなく、オーストリアの右派セバスティアン・クルツ首相(右)だった(筆者撮影)

8月下旬、東部ケムニッツで難民申請者がドイツ人男性を殺害したとされる事件をめぐり一部の極右が暴徒化。政界とメディアが過剰反応していると発言した国内情報機関、連邦憲法擁護庁長官が内務省次官に「格上げ」された。ゼーホーファー氏が擁護したからだ。

プロフィール

木村正人

在ロンドン国際ジャーナリスト
元産経新聞ロンドン支局長。憲法改正(元慶応大学法科大学院非常勤講師)や国際政治、安全保障、欧州経済に詳しい。産経新聞大阪社会部・神戸支局で16年間、事件記者をした後、政治部・外信部のデスクも経験。2002~03年、米コロンビア大学東アジア研究所客員研究員。著書に『欧州 絶望の現場を歩く―広がるBrexitの衝撃』(ウェッジ)、『EU崩壊』『見えない世界戦争「サイバー戦」最新報告』(いずれも新潮新書)。
masakimu50@gmail.com
twitter.com/masakimu41

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ロシア産肥料を米企業が積極購入、戦費調達に貢献と米

ビジネス

ECB、利下げごとにデータ蓄積必要 不確実性踏まえ

ビジネス

ソニー、米パラマウントに260億ドルで買収提案 ア

ビジネス

ドル/円、152円台に下落 週初から3%超の円高
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    常圧で、種結晶を使わず、短時間で作りだせる...韓国の研究チームが開発した「第3のダイヤモンド合成法」の意義とは?

  • 2

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 3

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 4

    「500万ドルの最新鋭レーダー」を爆破...劇的瞬間を…

  • 5

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 6

    ロシア軍の拠点に、ウクライナ軍FPVドローンが突入..…

  • 7

    「TSMC創業者」モリス・チャンが、IBM工場の買収を視…

  • 8

    中国のコモディティ爆買い続く、 最終兵器「人民元切…

  • 9

    「複雑で自由で多様」...日本アニメがこれからも世界…

  • 10

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 8

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    NASAが月面を横切るUFOのような写真を公開、その正体…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story