コラム

派閥相乗りの岸田政権、キシダノミクスに新鮮味も実効力も期待できない

2021年10月05日(火)19時36分

河野氏は年金未納者が生活保護に流れ、一種のモラルハザードが生じているとして、基礎年金部分を全額税金でカバーする代わりに生活保護の支出を抑制する独自の改革案を打ち出した。岸田氏はこれに対して反対の意向を示しており、むしろ年金支給を拡大する方向性である。

岸田氏は年金支給拡大の財源として、パートなど非正規労働者の年金加入を進めることで、その保険料を原資にするとしている。だが、非正規労働者のほぼ全てを厚生年金に加入させたとしても、獲得できる保険料は2兆円程度であり、年金支出を大幅に拡大する原資にはなり得ない。加えてパート労働者の年金加入促進は主婦層や零細企業などから反発を受ける可能性があり、実施は簡単ではないと思われる。

菅政権はコロナ危機に際して国民に十分な支援を実施しなかったことから、これも不人気の原因となってしまった。岸田氏は数十兆円規模の経済対策を実施するとしているが、大きな変革を実施しない以上、景気や財源など基礎的な状況は菅政権までと大きく変わらない。代わり映えのしない政策を続ければ、これまでと同様、「日本そのもの」に起因する問題が発生すると考えられ、これを政治的に解決できるのかがカギを握る。

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プロフィール

加谷珪一

経済評論家。東北大学工学部卒業後、日経BP社に記者として入社。野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当する。独立後は、中央省庁や政府系金融機関などに対するコンサルティング業務に従事。現在は金融、経済、ビジネス、ITなどの分野で執筆活動を行う。億単位の資産を運用する個人投資家でもある。
『お金持ちの教科書』 『大金持ちの教科書』(いずれもCCCメディアハウス)、『感じる経済学』(SBクリエイティブ)など著書多数。

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