コラム

もうアメリカにタダ乗りできない...トランプ2期目でさすがに欧州が目を覚ました

2025年03月19日(水)15時35分
欧州の軍備増強などをめぐりパリで行われたイギリス、ドイツ、フランス、イタリア、ポーランドの5カ国の国防相会合

欧州の軍備増強などをめぐりパリで行われたイギリス、ドイツ、フランス、イタリア、ポーランドの5カ国の国防相会合 BENOIT TESSIER―REUTERS

<トランプ米大統領がどれだけひどく見えたとしても明らかに進展をもたらした2つのこと>

このところの一連の動きを経て、「ヨーロッパ」は自らの大陸の安全保障に対し、より大きい責任を負う方向に迅速かつ断固として進まなければならないことが明らかになっている。アメリカの人的資源や資金、リーダーシップに依存し続けることはできない。

それは、ウクライナのゼレンスキー大統領とトランプ米大統領・バンス副大統領との「メルトダウン会談」の前から予定されていた、スターマー英首相開催のロンドンでの首脳会議で、まさに話し合われた内容だ。この議題は今や、より緊急性を帯びた段階にある。


冷戦末期の1980年代でさえ、アメリカがヨーロッパの「保護者」になってくれずとも、ヨーロッパの自由国家は自分たちの面倒を自分で見られるはずだと言われていた。当時、西欧の人口はソ連と東側諸国を合わせた全人口に匹敵していたし、経済規模は東側よりはるかに大きかった。

西欧に足りなかったのは軍事力だった。アメリカが僕たちヨーロッパのために冷戦に勝利し、ヨーロッパでの米軍駐留維持のために莫大な資金を費やし、ソ連の体制が自らの不条理によって崩壊するまでソ連を抑制し続けるための軍事力を提供し続けてくれたことは、しっかりと心に留めておくことが重要だ。ヨーロッパはアメリカに多大な恩義を負っている。

ソ連の崩壊とワルシャワ条約機構の解体後、ヨーロッパはさらに気を緩めた。超大国としてのロシアは崩壊し、解放された東欧諸国はわれらの側に殺到した。僕たちヨーロッパは、自分たちの価値観が一人勝ちする新たな平和の時代が到来したと自己満足していた。防衛面では、僕たちはアメリカに「タダ乗り」していたのがさらに「気ままなタダ乗り」になっていった。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ゲイツ氏、45年までにほぼ全資産2000億ドル寄付

ビジネス

三菱重の今期、ガスタービンや防衛好調で最高益に 受

ワールド

ガザ南部ラファ近郊で「激戦」とハマス、イスラエル兵

ワールド

トランプ政権、南ア白人の難民受け入れへ 来週にも=
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 2
    ついに発見! シルクロードを結んだ「天空の都市」..最新技術で分かった「驚くべき姿」とは?
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 5
    骨は本物かニセモノか?...探検家コロンブスの「遺骨…
  • 6
    中高年になったら2種類の趣味を持っておこう...経営…
  • 7
    恥ずかしい失敗...「とんでもない服の着方」で外出し…
  • 8
    教皇選挙(コンクラーベ)で注目...「漁師の指輪」と…
  • 9
    韓国が「よく分からない国」になった理由...ダイナミ…
  • 10
    あのアメリカで「車を持たない」選択がトレンドに …
  • 1
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 2
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つの指針」とは?
  • 3
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得る? JAXA宇宙研・藤本正樹所長にとことん聞いてみた
  • 4
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 5
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 6
    古代の遺跡で「動物と一緒に埋葬」された人骨を発見.…
  • 7
    5月の満月が「フラワームーン」と呼ばれる理由とは?
  • 8
    シャーロット王女とスペイン・レオノール王女は「どち…
  • 9
    日々、「幸せを実感する」生活は、実はこんなに簡単…
  • 10
    インドとパキスタンの戦力比と核使用の危険度
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 5
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 6
    健康は「何を食べないか」次第...寿命を延ばす「5つ…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    クレオパトラの墓をついに発見? 発掘調査を率いた…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story