コラム

知らないと痛い目を見る、ヨーロッパ鉄道旅行は落とし穴だらけ

2023年11月18日(土)15時35分
ドイツ鉄道の駅

「効率的なドイツ」という定義はドイツの鉄道には当てはまらない MATTHIAS RIETSCHELーREUTERS

<ドイツの鉄道は遅延で接続も滅茶苦茶、フランスの長距離列車はラグビーW杯以上にチケット入手困難...2カ月ヨーロッパ周遊旅行をして悩まされたこと>

ここ2カ月間、13カ国にわたり1万キロ以上を電車で旅してきて、僕はヨーロッパの鉄道システムについて1万語に及ぶ壮大な批評を書きたくてたまらない。でもぐっとこらえて、いくつか主に注目した点を述べるにとどめようと思う。

まず、「ドイツの効率性」の評判は、鉄道網に関して言えば当てはまらないか、もしくは「もはや今は」当てはまらない。かつてはかなり信頼性が高く、時間に正確な鉄道網であって、それはドイツがヨーロッパ大陸の中心地に位置しているだけに余計に重要だった。つまり、東から西へ行くのでも、北から南に行くのでも、その逆方向の場合でも、ドイツを通らなければならなかったのだ。

だがここ数年のどこかの時点で、そのシステムがほころび出した。今回の旅行でドイツを移動したあらゆる機会、そして怒れるドイツの乗客との数々の会話から、僕はその事実を裏付けることができる。

今回僕は、ドイツ国内を6回移動したが、そのうち「たったの」20分遅れで目的地に到着した時がベストな結果だった。でも乗客数百人にとってはその列車はベストではなかったようだ。列車内の全てのトイレが故障していて使用できず、停車予定でない駅で多くの乗客を一時乗降させて駅のトイレを使わせなければならなかったからだ。

それから次の主要駅に着くと(僕はここで降りた)、残りの乗客は全員、荷物を持って乗り継ぎ列車に乗り換えるようにと突然アナウンスがされた。おそらく彼らは、乗り継いだ列車では席がなく座れなかっただろう。

遅延が生じるとみんなが接続に失敗

ドイツ鉄道の過ちの原因は、ほぼ全ての電車が時間通りに運行することを大前提にしてシステムを構築していることにあるようだ。ゆえにいつも、乗り換え時間が短かった。ドレスデンでは14分、ハンブルクでは8分という具合だ。

だから列車に遅れが生じ始めると、みんなが接続をしくじることになった。そんなわけで、最初に乗る電車が10分遅れると到着が1時間遅れることになり、乗り換えた次の列車では席がなく立ち乗りになったりする。

もちろん、時には到着列車を待ってしばらく出発を遅らせることもあるが、結局その列車が遅れて到着することになり、ドミノ効果で別のところに影響が生じ始める。

プロフィール

コリン・ジョイス

フリージャーナリスト。1970年、イギリス生まれ。92年に来日し、神戸と東京で暮らす。ニューズウィーク日本版記者、英デイリー・テレグラフ紙東京支局長を経て、フリーに。日本、ニューヨークでの滞在を経て2010年、16年ぶりに故郷イングランドに帰国。フリーランスのジャーナリストとしてイングランドのエセックスを拠点に活動する。ビールとサッカーをこよなく愛す。著書に『「ニッポン社会」入門――英国人記者の抱腹レポート』(NHK生活人新書)、『新「ニッポン社会」入門--英国人、日本で再び発見する』(三賢社)、『マインド・ザ・ギャップ! 日本とイギリスの〈すきま〉』(NHK出版新書)、『なぜオックスフォードが世界一の大学なのか』(三賢社)など。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

OPECプラス、2日会合はリヤドで一部対面開催か=

ワールド

アングル:デモやめ政界へ、欧州議会目指すグレタ世代

ワールド

アングル:アルゼンチン止まらぬ物価高、隣国の町もゴ

ビジネス

アングル:肥満症薬に熱視線、30年代初頭までに世界
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 2

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...すごすぎる日焼けあとが「痛そう」「ひどい」と話題に

  • 3

    ヘンリー王子とメーガン妃の「ナイジェリア旅行」...痛すぎる教訓とは?

  • 4

    ウクライナ「水上ドローン」が、ロシア黒海艦隊の「…

  • 5

    ロシアT-90戦車を大破させたウクライナ軍ドローン「…

  • 6

    「自閉症をポジティブに語ろう」の風潮はつらい...母…

  • 7

    1日のうち「立つ」と「座る」どっちが多いと健康的?…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 10

    「同性婚を認めると結婚制度が壊れる」は嘘、なんと…

  • 1

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 2

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像をウクライナが公開...シャベルで応戦するも避けきれず

  • 3

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発」で吹き飛ばされる...ウクライナが動画を公開

  • 4

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲー…

  • 5

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 6

    「なぜ彼と結婚したか分かるでしょ?」...メーガン妃…

  • 7

    仕事量も給料も減らさない「週4勤務」移行、アメリカ…

  • 8

    都知事選の候補者は東京の2つの課題から逃げるな

  • 9

    少子化が深刻化しているのは、もしかしてこれも理由?

  • 10

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などできない理由

  • 4

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 5

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 6

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 7

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 8

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story