コラム

仏ル・モンド紙が指摘した東京五輪「変異株の祭典」、「鉄の癒着三角形」とは

2021年05月12日(水)12時54分

「オリンピックの費用は1兆6440億円(154億ドル・128億ユーロ)に跳ね上がった。スポンサーは約4000億円(33億ドル)を投資している」、「強力な広告代理店『電通』は、自民党と密接な関係にあり、大会の独占的な宣伝権を持っており、国際オリンピック委員会(IOC)と契約を結んでいるが、財政難から脱却するための利益を期待している。IOCの収入の73%は、オリンピックの放送権に依存している」と詳細に説明している。

さらに加えて、「ところが、様々な特典はなくなるし、(外国人の観客がいないため)チケットの払い戻しや、世界中のチャンネルに販売された驚異的な放映権の払い戻しが加わることになる。中止はIOCにとって、健康被害のリスクよりもコストがかかるだろう」とする。

ここで出てくるのが、利害関係者の共謀と癒着「鉄の三角形」である。


大会維持への執着は、自民党、高級官僚、および経済界が「鉄の三角形」と呼ばれる利害関係の絡み合いが反映されている。これは、日本の世界における発展が印象的だった当時(1960-1990)は、「日本株式会社」と呼ばれていた。

鉄の癒着三角形とは「日本の体制そのもの」であるようだ。


上智大学の政治学者である中野晃一氏は、「スポーツ村、医療村、原子力村といった、『村』と呼ばれる強力な団体(ロビー)の利害の一致というシステムが問題なのです」と主張する。

「この構成員たちは、他の権利を認めず、遅鈍(惰性)、無責任にすぐになるのです。大会に集中していた彼らは、パンデミックという現実を直視することができないのです」

この三角形の中で、元上級公務員が大企業の役員になり、その企業の幹部が自民党の看板のもとに政治家になるのである。

その他にも、このような癒着は、公共の契約の締結における透明性の欠如の一因にもなっており、危機管理の過ちと無関係ではないーーと嘆く、東京大学の政治学者鈴木氏の発言も登場する。「日本の危機管理の欠点は、長期的な対策よりも短期的な対策が優先されていることにあります。問題は構造的なものです」という。

imai20210512120801.jpg
パリの左岸にあるル・モンドの本社。ニューヨーク・タイムズ社と外観が似ている(こちらは超高層ビル)。(写真:ロイター/アフロ)

アメリカで奮闘する日本人教授

以上、いかがだっただろうか。

プロフィール

今井佐緒里

フランス・パリ在住。個人ページは「欧州とEU そしてこの世界のものがたり」異文明の出会い、平等と自由、グローバル化と日本の国際化がテーマ。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。元大使インタビュー記事も担当(〜18年)。ヤフーオーサー・個人・エキスパート(2017〜2025年3月)。編著『ニッポンの評判 世界17カ国レポート』新潮社、欧州の章編著『世界で広がる脱原発』宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省庁の仕事を行う(2015年〜)。出版社の編集者出身。 早稲田大学卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

高市首相が就任会見、米大統領に「日本の防衛力の充実

ビジネス

米GM、通年利益見通し引き上げ 関税の影響額予想を

ワールド

インタビュー:高市新政権、「なんちゃって連立」で変

ワールド

サルコジ元仏大統領を収監、選挙資金不正で禁固5年
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 5
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 6
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 9
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 10
    若者は「プーチンの死」を願う?...「白鳥よ踊れ」ロ…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 9
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 10
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story