コラム

仏ル・モンド紙が指摘した東京五輪「変異株の祭典」、「鉄の癒着三角形」とは

2021年05月12日(水)12時54分
東京五輪の聖火リレー(福島)

福島から始まった聖火リレーも、ほとんど報道されなくなった(写真は3月26日) Issei Kato-REUTERS

<東京五輪は「変異株の祭典」になりかねない、と指摘して国会でも取り上げられた仏紙の記事は、他にも辛辣なことを書いていた>

5月10日国会で、共産党の山添拓議員が、オリンピックとコロナ禍に関する質問をした。

「アメリカのワシントン・ポスト紙は、コラムで五輪の中止を促しました。フランスのル・モンド紙も、変異株の祭典となり感染を加速させる危険性があると。開催ありきで突き進むのですか」

菅首相の答弁は、相変わらず言っても言わなくても同じようなことしか答えていなかったが、気になるのは「変異株の祭典」のほうである。

一体、世界的に有名なフランスの「ル・モンド」紙は、何を書いていたのだろうか。

「聖火リレーの沿道の音を消そうとするNHK」

該当の記事は、4月下旬に緊急事態宣言が出た際に発表された「ウィルスの脅威にさらされた東京オリンピック」という記事にちがいない。

リードでは「日本では金曜日(4月23日)東京、京都、大阪、兵庫の各県で新たに緊急事態宣言を発令した。オリンピックを開催するという公約を守る政府の決意にも、ひびが入っているようだ」とある。

記事の前半では、まずはオリンピックに懐疑的になってきた日本の様子が描かれている。

最初に引用されているのは、4月下旬の政治家たちの発言の数々だ。

山梨県の長崎幸太郎知事の発言(健康状態に極めて大きな深刻な影響を及ぼすような感染状況であれば、オリンピックなんかやっているところではない)や、自民党の二階俊博幹事長が4月15日にテレビ番組で発したセリフ(これ以上無理だということだったら、すぱっとやめないといけない)などである。

さらに、東京都の小池百合子知事は、選択肢の一つであってそれ以上ではないと述べ、自民党は大会開催の立場に変わりはないと繰り返したと書いている。

ル・モンドは「二階氏の発言は、多数派の中で生まれつつある疑念を反映している」とする。

全国で起こっていることとして、「7月23日の開会式に向けて、イベントのスケジュールがどんどん変更されている」、「厳重な予防措置にもかかわらず、聖火リレーの参加者1名が陽性反応が出た」と報告。

さらに「熱狂は疑念に変わり、日本の大多数の人々がこのイベントに反対している。政府は反対意見を聞きたくないので、公共放送NHKは、オリンピックに対する抗議の声が響いてくるやいなや、47都道府県をめぐるオリンピックの聖火リレーの背景音(訳注:沿道の人の声)をカットするのが良いと考えるほどである」と書いている

プロフィール

今井佐緒里

フランス・パリ在住。個人ページは「欧州とEU そしてこの世界のものがたり」異文明の出会い、平等と自由、グローバル化と日本の国際化がテーマ。EU、国際社会や地政学、文化、各国社会等をテーマに執筆。ソルボンヌ(Paris 3)大学院国際関係・欧州研究学院修士号取得。駐日EU代表部公式ウェブマガジン「EU MAG」執筆。元大使インタビュー記事も担当(〜18年)。ヤフーオーサー・個人・エキスパート(2017〜2025年3月)。編著『ニッポンの評判 世界17カ国レポート』新潮社、欧州の章編著『世界で広がる脱原発』宝島社、他。Association de Presse France-Japon会員。仏の某省庁の仕事を行う(2015年〜)。出版社の編集者出身。 早稲田大学卒。ご連絡 saorit2010あっとhotmail.fr

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

トランプ氏「ミサイル実験より戦争終結を」 プーチン

ビジネス

中国人民銀、公開市場での国債売買を再開と総裁表明 

ビジネス

インド、国営銀行の外資出資上限を49%に引き上げへ

ビジネス

日米財務相、緊密な協調姿勢を確認 金融政策「話題に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水の支配」の日本で起こっていること
  • 3
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した国は?
  • 4
    庭掃除の直後の「信じられない光景」に、家主は大シ…
  • 5
    「平均47秒」ヒトの集中力は過去20年で半減以下にな…
  • 6
    「信じられない...」レストランで泣いている女性の元…
  • 7
    メーガン妃の「お尻」に手を伸ばすヘンリー王子、注…
  • 8
    1700年続く発酵の知恵...秋バテに効く「あの飲み物」…
  • 9
    シンガポール、南シナ海の防衛強化へ自国建造の多任…
  • 10
    【テイラー・スウィフト】薄着なのに...黒タンクトッ…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 5
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 8
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 9
    報じられなかった中国人の「美談」
  • 10
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 1
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 2
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 9
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story