コラム

イスラエルだけの責任ではない「ガザ封鎖」...エジプトが直面する「ハマスのジレンマ」とは?

2024年03月04日(月)12時25分

複数の当局者が、襲撃犯はトンネルを通ってエジプトに侵入したハマスだと証言している。脱獄囚の中にはハマスと同胞団のメンバー数十人も含まれていた。

エジプトのシシ大統領が昨年10月18日、ガザ市民をエジプトに受け入れれば「シナイ半島がイスラエルへの抵抗の拠点になる」と述べたのは、それが現実的な脅威だからだ。

エジプトはハマスがシナイ半島に侵入し、そこを根城に同胞団残党と合流して強大化し、テロを繰り返し、体制を転覆させるシナリオを最も恐れている。

エジプトのシュクリ外相は2月17日、イスラエルを承認し交渉を望むというパレスチナの多数派の合意からハマスが外れていると批判し、資金援助する者はパレスチナ諸派の分断が目的だと苦言を呈した。ハマスの3大支援国はイラン、カタール、トルコで、いずれも同胞団支援国だ。

エジプトはパレスチナ国家建設を支持している。しかし自国の安全保障は何物にも代え難い。ガザ問題の複雑さを勘案せずにその咎(とが)をイスラエルだけに負わせても、現実的解決にはつながらない。

プロフィール

飯山 陽

(いいやま・あかり)イスラム思想研究者。麗澤大学客員教授。東京大学大学院人文社会系研究科単位取得退学。博士(東京大学)。主著に『イスラム教の論理』(新潮新書)、『中東問題再考』(扶桑社BOOKS新書)。

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