コラム

スーダン退避は「黒い関係」の果実

2023年05月16日(火)13時00分

他方、スーダン情勢が混乱し在留外国人が退避を余儀なくされた今、このUAEに感謝の意を表明しているのは日本だけではない。韓国の中央日報は韓国政府当局者が、情報が混乱するなか、UAEから受けた情報を信じて在留韓国人救出に成功したと述べた件を報じている。韓国人と共に脱出したなかには日本人もいた。

傭兵をはじめ、金取引や武器提供、マネーロンダリングなど、UAEとスーダン軍およびRSFとの「黒い関係」が今回の内紛の原因をつくったという声もあれば、UAEはとても中立な仲介者とは言えないという批判もある。しかし、だからこそUAEは双方から情報を得ることができ、それが日本人や韓国人の安全な退避に貢献したのも事実だ。

国際関係の現実はきれい事では済まない。フェアでもクリーンでもない関係の「おかげ」で、命拾いをすることもある。平和や反戦、自由や平等、民主主義といった理念が空疎にしか響かない世界が、この地平にはまだ広がっている。

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プロフィール

飯山 陽

(いいやま・あかり)イスラム思想研究者。麗澤大学客員教授。東京大学大学院人文社会系研究科単位取得退学。博士(東京大学)。主著に『イスラム教の論理』(新潮新書)、『中東問題再考』(扶桑社BOOKS新書)。

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