コラム

中国のデジタル影響工作最新動向──中国の外交官は1日平均778回ツイートする

2021年08月18日(水)18時45分

中国の外交官がツイートし、その数秒後にスーパースプレッダーが拡散

オクスフォード大学インターネット研究所によれば、中国は外交官によるパブリック・ディプロマシーを強化しているという。パブリック・ディプロマシーとは広報文化外交と呼ばれ、広報や文化交流を通じて自国の主張を外国に伝える手法である。

同レポート掲載のグラフを見ると、その急増ぶりがよくわかる。赤の線が外交官アカウントである。

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2020年6月から2021年2月の間に、中国の外交官と中国メディア10社が投稿したすべてのツイートとFacebookの投稿を分析した結果、外交官と国営メディアの活動が活発になっており、これらの活動を拡散する組織的な関与があることがわかった。

中国の外交官と中国メディアの活動は、特にツイッターで顕著で、外交官は、9カ月間で合計201,382回、1日平均778回ツイートしている。約700万の「いいね!」、100万の「リプライ」、130万の「リツイート」があった。フェイスブックでは3万4,041回の投稿を行っていた。

中国メディアは、ツイッターとフェイスブックで176のアカウントを運用しており、英語をはじめとするさまざまな言語で情報発信している。投稿した回数は合計で70万回、「いいね!」を押された回数は3億5500万回、コメントや拡散された回数は2,700万回を超えた。

これらの反応のかなりのほとんどは、投稿を拡散するスーパースプレッダーによって生み出されている。スーパースプレッダーは、登校後わずか数秒で反応していた。中国関連アカウントのリツイートの約半分は、上位1%のスーパースプレッダーによって行われており、0.1%のスーパースプレッダーで25%を占めていた。

そして、スーパースプレッダーの多くは、ツイッター社によってプラットフォーム違反を理由に停止されていた。2020年6月から2021年1月の間に行われた中国の外交官のリツイートのうち、10件に1件以上が、後にツイッター社によって停止されたアカウントが行ったものだった。これらのアカウントの多くは、停止されるまで数ヶ月間活動していた。

レポートの巻末には世界でパブリック・ディプロマシーに関与しているアカウントのリストがついている。日本に関連していると思われるツイッターアカウントは下記であるが、積極的なパブリック・ディプロマシー活動は行っていないようである(1日778回もツイートしていない)。ただし外交官アカウントの多くは世界的に中国の外交官アカウントが急増した期間に新しく作られたものだった。

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プロフィール

一田和樹

複数のIT企業の経営にたずさわった後、2011年にカナダの永住権を取得しバンクーバーに移住。同時に小説家としてデビュー。リアルに起こり得るサイバー犯罪をテーマにした小説とネット世論操作に関する著作や評論を多数発表している。『原発サイバートラップ』(集英社)『天才ハッカー安部響子と五分間の相棒』(集英社)『フェイクニュース 新しい戦略的戦争兵器』(角川新書)『ウクライナ侵攻と情報戦』(扶桑社新書)など著作多数。X(旧ツイッター)

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