コラム

コロナ禍と東京五輪を挟んだ6年ぶりの訪問で、「新しい日本」を見た

2024年04月23日(火)15時09分

日本は自国の運命を自ら切り開こうとし始めた

アメリカは、1945年には世界のGDPの50%を占めていたが、現在その割合は25%ほどに低下している。アジアの国々は経済的に台頭し、中国は世界の中心の地位を取り戻し、ますます強硬に自己主張をするようになった。

日本はこれまでもっぱら、豊かでテクノロジーの進んだ国として振る舞ってきたが、世界の現実が変わり、過去の記憶が薄らぐのに伴い、ほかの国々と同じように自国の運命を自ら切り開こうとし始めた。それは、日本にとって開放感をもたらすと同時に、責任を伴う変化でもある。

今回の日本訪問では、理髪店ではない場所で思いがけず素敵な経験をした。東京の国立美術館へ向かうタクシーの運転手と、指揮者の故小沢征爾の話で盛り上がったのだ。運転手は話に夢中になるあまり、途中で車を止めて、世界の交響楽団について熱弁を振るい、自分はフルートに熱心に取り組んでいるのだと教えてくれた。

2024年の東京は、高齢化と人口減少、賃金の停滞、中国の脅威とアメリカのつまずき、地球温暖化などの不安はあっても、6年前より余裕があるように感じられた。そして、世界が不安定化するなかで、日本は自立性を強めているように見えた。世界は変わり、国々が互いを見る目も変わった。それに伴い、日本も変わったのだ。

プロフィール

グレン・カール

GLENN CARLE 元CIA諜報員。約20年間にわたり世界各地での諜報・工作活動に関わり、後に米国家情報会議情報分析次官として米政府のテロ分析責任者を務めた

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