コラム

古谷経衡「我、如何にして政党党首たらんと欲す──れいわ新選組代表選挙顛末記」

2022年12月31日(土)12時59分

れいわ新選組は、結党来初めての代表選において細則を定めているが、党員(同党ではオーナーズと呼ぶ)の権利行使に関する一定期間経過措置(ふつうは、党首選挙の選挙権を得るには、党員になって1年などの縛りがある)がまったく無い。実際私は、れいわ新選組の党員になったのは、代表選挙に立候補すると記者会見をした2022年12月8日の前日である2022年12月7日である。クレジットカードで会費(1万円)を払って1年の党員資格を有したのである。こんな雑でええのか......と確かに心配になった。

党首選挙において、純然たる民間人を候補にすることにはれいわ党内で異論があったという。「まったく素人の民間人が乗り込んできて、党を乗っ取られたらどうするのか」。大石あきこ衆議院議員(比例近畿)が反対の急先鋒であったという。その懸念は当然のことだ。とはいえ、実際にそんな目的をもって党首選に乗り込んでくる剛毅の輩はそこまでいない。現実には「民間人であっても出馬可能」とは言いつつ、結局は身内だけで決まる催しと思われている。私はここを破壊したいと思った。

議員である必要はナシ

党首選挙は所詮、その党の現職国会議員でのみ争われるという思い込みは無かっただろうか。総理大臣は国会議員でなければならないという憲法上の規定がある。しかし、政党の党首は「現職の国会議員でなければならない」という規定は一切ない。日本国憲法は、政党の実際において一切、何ら規定していないのである。実は国政政党は、そのトップが全くの民間人であることを許容しているのだ。つまり、実際に政治を動かしている自民や維新や立憲と言った「政党」は、政治資金規正法等の縛りはあるものの、その有資格要件等については「完全に自由」なのである。これは既知ではあるが、改めて認識されていない「台風の目」とも呼べる盲点だ。

民主主義の重要なファクターである「政党政治」の実勢にあって、その政党の党首は「議員であるか民間人であるか」の規定は存在しない。また、それを選出する党独自の党首選挙(代表選挙)にあって、実際の被選挙権の構成要件は、党が定めるものであって法律で規定されているわけではない。これは、法律的な解釈である以上に理論のうえで正統性があり、逆にいえばこれが暗黙の了解の元「議員しかできない」と思っているのであれば、それは単に「慣習への盲従」であり、そんな縛りは無いのである。

プロフィール

古谷経衡

(ふるや・つねひら)作家、評論家、愛猫家、ラブホテル評論家。1982年北海道生まれ。立命館大学文学部卒業。2014年よりNPO法人江東映像文化振興事業団理事長。2017年から社)日本ペンクラブ正会員。著書に『日本を蝕む極論の正体』『意識高い系の研究』『左翼も右翼もウソばかり』『女政治家の通信簿』『若者は本当に右傾化しているのか』『日本型リア充の研究』など。長編小説に『愛国商売』、新著に『敗軍の名将』

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