<極限状態で戦う棋士の研ぎ澄まされた精神力はどのように培われるのか――。共に勝負の世界で生きる日本将棋連盟会長・佐藤康光九段とファンドマネージャーの藤野英人氏が、感情の抑制について熱い論戦を交わした>

ひふみ投信シリーズのファンドマネージャーである藤野英人氏と、お金や投資、経済について学んでいくYouTubeチャンネル「お金のまなびば!」

前回(藤井聡太王位・棋聖の「今までの棋士にない加速」評、将棋とビジネスに共通するマルチタスク化)に引き続き、日本将棋連盟会長・佐藤康光九段との対談「【藤野英人×佐藤康光】読みの勝負をする棋士に学ぶ!思い通りにいかない時の感情との向きあい方」から、将棋や投資の勝敗を分けるメンタルコントロールについて考える。

棋士の対局では棋戦ごとに持ち時間が異なり、最も長いのは名人戦の9時間。通常は80~120手で決着がつくことが多く、プロは数十~数百手先まで読むと言われている。

そんな長丁場の真剣勝負を戦い抜くには、常に平常心でいることが不可欠だ。「棋士ほど勝負に対して感情と向き合っている職種はない」と、藤野氏は言う。

これに対し、佐藤九段は

「将棋は大逆転が起こりやすい競技。一手ミスをするだけで、どんなに優勢な局面でも形勢が入れ替わってしまうことが多々あるので、感情の揺れを小さくしながら戦うことが大事。ただし、限られた持ち時間の中で戦うので、棋士でも状況を冷静に把握できないケースはある」

と、プロでも感情に向き合うことは難しいと語った。

「3時間くらい大長考して、ある程度読み切ったつもりだったのに、6手後、8手後に全く想像しない手が出てきてしまうことがある。『自分はそれなりに実力がある』と思っている人ほど陥りやすい」

自信を持つことは大切だが、傲慢になり過ぎるとミスになってしまうことがあるようだ。

fujino20210721shogi2-2.jpg
「お金のまなびば!」より

パニックに陥ったときは「香車を見る」

将棋に負けず劣らず、投資もまた勝負の世界である。株式市場が開いているのは365日中、250~260日。1年間の3分の2以上、毎回試合をしているようなものだと藤野氏は言う。

「単純計算で130勝すれば引き分けとなり、ファンドマネ―ジャーとして生き残れる。勝率5割を下回れば引退だ」

シビアな世界だが、プロのファンドマネージャーはアマチュアと比べて感情の起伏が穏やかで、マーケットが暴落したからといって慌てることは比較的少ないという。

羽生善治九段は「対局中に勝利を確信したとき手が震える」
【関連記事】