コラム

棋士は感情をどうコントロールしているか、直観は正しいか、投資に生かせるか

2021年07月21日(水)17時10分
藤野英人、本将棋連盟会長・佐藤康光九段

「お金のまなびば!」より

<極限状態で戦う棋士の研ぎ澄まされた精神力はどのように培われるのか――。共に勝負の世界で生きる日本将棋連盟会長・佐藤康光九段とファンドマネージャーの藤野英人氏が、感情の抑制について熱い論戦を交わした>

ひふみ投信シリーズのファンドマネージャーである藤野英人氏と、お金や投資、経済について学んでいくYouTubeチャンネル「お金のまなびば!」

前回(藤井聡太王位・棋聖の「今までの棋士にない加速」評、将棋とビジネスに共通するマルチタスク化)に引き続き、日本将棋連盟会長・佐藤康光九段との対談「【藤野英人×佐藤康光】読みの勝負をする棋士に学ぶ!思い通りにいかない時の感情との向きあい方」から、将棋や投資の勝敗を分けるメンタルコントロールについて考える。

棋士の対局では棋戦ごとに持ち時間が異なり、最も長いのは名人戦の9時間。通常は80~120手で決着がつくことが多く、プロは数十~数百手先まで読むと言われている。

そんな長丁場の真剣勝負を戦い抜くには、常に平常心でいることが不可欠だ。「棋士ほど勝負に対して感情と向き合っている職種はない」と、藤野氏は言う。

これに対し、佐藤九段は

「将棋は大逆転が起こりやすい競技。一手ミスをするだけで、どんなに優勢な局面でも形勢が入れ替わってしまうことが多々あるので、感情の揺れを小さくしながら戦うことが大事。ただし、限られた持ち時間の中で戦うので、棋士でも状況を冷静に把握できないケースはある」

と、プロでも感情に向き合うことは難しいと語った。

「3時間くらい大長考して、ある程度読み切ったつもりだったのに、6手後、8手後に全く想像しない手が出てきてしまうことがある。『自分はそれなりに実力がある』と思っている人ほど陥りやすい」

自信を持つことは大切だが、傲慢になり過ぎるとミスになってしまうことがあるようだ。

fujino20210721shogi2-2.jpg

「お金のまなびば!」より

パニックに陥ったときは「香車を見る」

将棋に負けず劣らず、投資もまた勝負の世界である。株式市場が開いているのは365日中、250~260日。1年間の3分の2以上、毎回試合をしているようなものだと藤野氏は言う。

「単純計算で130勝すれば引き分けとなり、ファンドマネ―ジャーとして生き残れる。勝率5割を下回れば引退だ」

シビアな世界だが、プロのファンドマネージャーはアマチュアと比べて感情の起伏が穏やかで、マーケットが暴落したからといって慌てることは比較的少ないという。

プロフィール

藤野英人

レオス・キャピタルワークス 代表取締役会長兼社長、CIO(最高投資責任者)
1966年富山県生まれ。国内・外資大手資産運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年にレオス・キャピタルワークスを創業。日本の成長企業に投資する株式投資信託「ひふみ投信」シリーズを運用。投資啓発活動にも注力しており、東京理科大学MOT上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師、日本取引所グループ(JPX)アカデミーフェロー、一般社団法人投資信託協会理事を務める。主な著書に『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)、『投資家が「お金」よりも大切にしていること』(星海社新書)、『さらば、GG資本主義――投資家が日本の未来を信じている理由』(光文社新書)、『「日経平均10万円」時代が来る!』(日経BP 日本経済新聞出版)など。

あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米GM、通年利益予想引き上げ 関税の影響見通し下方

ワールド

ウクライナ北部で停電、ロシア軍が無人機攻撃 数十万

ワールド

ロシア大統領府、米ロ首脳会談の日程は未定 「準備が

ワールド

米政府閉鎖、国民は共和党を非難 トランプ氏支持率は
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
特集:脳寿命を延ばす20の習慣
2025年10月28日号(10/21発売)

高齢者医療専門家の和田秀樹医師が説く――脳の健康を保ち、認知症を予防する日々の行動と心がけ

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 2
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 3
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 4
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 5
    TWICEがデビュー10周年 新作で再認識する揺るぎない…
  • 6
    米軍、B-1B爆撃機4機を日本に展開──中国・ロシア・北…
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 9
    「認知のゆがみ」とは何なのか...あなたはどのタイプ…
  • 10
    【インタビュー】参政党・神谷代表が「必ず起こる」…
  • 1
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号返上を表明」も消えない生々しすぎる「罪状」
  • 2
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多い県」はどこ?
  • 3
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    まるで『トップガン』...わずか10mの至近戦、東シナ…
  • 6
    フィリピンで相次ぐ大地震...日本ではあまり報道され…
  • 7
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 8
    本当は「不健康な朝食」だった...専門家が警告する「…
  • 9
    日本で外国人から生まれた子どもが過去最多に──人口…
  • 10
    「心の知能指数(EQ)」とは何か...「EQが高い人」に…
  • 1
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になりやすい人」が持ち歩く5つのアイテム
  • 2
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ監督が明かすプレーオフ戦略、監督の意外な「日本的な一面」とは?
  • 3
    カミラ王妃のキャサリン妃への「いら立ち」が話題に...「少々、お控えくださって?」
  • 4
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 7
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 8
    「日本の高齢化率は世界2位」→ダントツの1位は超意外…
  • 9
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
  • 10
    【クイズ】日本人が唯一「受賞していない」ノーベル…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story