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免疫機能調整で注目のビタミンD、取り過ぎるくらいがちょうどいい? スイスではDオイルが普及 

2021年02月24日(水)19時26分
岩澤里美(スイス在住ジャーナリスト)

スイスでは最近まで、ビタミンDサプリメントは動物性のビタミンD(D3)で原料は羊毛脂肪だったが、いまは藻類などから作られた植物系のビタミンD(D2)製品も販売されている。錠剤、カプセル、液状のどれがよりよいかについても、アンベルクさんに聞いてみた。

「私たちは、ほとんどの場合、吸収が最もよいオイルベースのビタミンD液をお薦めしています。そして、1滴のビタミンD濃度が高いもののほうが、数える手間が少ないので便利です(たとえば1回400IU(IUは国際単位)を取るとき、1滴100IU含有液だと4滴だが、1滴400IU含有液だと1滴で済む)。瓶がピペットのタイプ(写真の3本並んだ中央)は、液を取り出しやすく使いやすいです。穴あき中栓タイプだと穴が小さくて液が垂れにくいことがよくあります。2番目にお薦めするのは、個人的には、オイルベースで濃度が高く、1日1回飲めばいいカプセルです。ですが、どの形状のビタミンDにするかは、もちろんお客様の好みですね」

ビタミンK2との併用は骨の強化のため

昔から知られるように、ビタミンDはカルシウムの吸収を助け、骨の代謝に作用する(腸でのカルシウム吸収を促進して血中のカルシウム濃度を高め、そのカルシウムが骨へ送られる)。

ビタミンK2はカルシウムの骨への沈着を強める働きがある。血中のカルシウム濃度が高くなり過ぎないようにし、骨を強くするにはビタミンK2のサポートが必要だ。そのため、ビタミンDと一緒にビタミンK2を取ることは重要で、ヨーロッパでも日本でも「ビタミンD+ビタミンK2」サプリメントが販売されている。

「ビタミンD摂取量と骨構造への影響に関連するビタミンK(K2)の調査はまだ不足していて、確実ではありません。ですが、ポイントはもちろん、ビタミンKやカルシウム、骨のほかの重要な構成要素がどれほど補給されているかということです。ビタミンKのことがスイスで初めて話題になったのは3、4年ほど前です。それまで、私の薬局ではビタミンK補給品は販売していなかったため、ビタミンKを多く含む納豆を食べることを薦めていました(冷凍納豆は日本食材店で入手可)」(アンベルクさん)

「ビタミンD補給品の取り方ですが、ビタミンDは脂溶性のため、油分のある食事と一緒に取った方が一般的にはいいですね。それと、ひと月分のビタミンD量を1回で取れる製品もありますが、最適とはいえません。体は、少なくとも週1回ビタミンDを摂取したほうが適切に処理できます」

スイスでは、ビタミンD検査数が増加

ビタミンD不足の人は、日本でもとても多いと報じられている。屋内で過ごすことが多い、外出するとき紫外線を過度に避けようとする傾向(美肌作りのため1年中日焼け止めを使う女性もいる)、魚離れの食事(昭和40年=1965年以降生 ま れ の 人 は あまり魚を食べず、ビタミンDが不足しやすい可能性あり)、アレルギーのためビタミンDの食材である卵や魚が食べられないといったことが原因だ。

ビタミンDが足りていない人が目立つとはいえ、自分がビタミンD不足か知らない人はきっと多いだろう。1番いいのは、血を採取して血中のビタミンD濃度を検査してもらうことだろう。日本では医院で、数千円で受けられる。

スイスでは医院のほか、TopPharmグループやほかの薬局でもビタミンD検査を提供している。アンベルクさんの薬局では2019年から検査ができるようにし、多くの希望者がやってきている。スイスでは医師のもとで検査を受ける人は増えていて、2008年には9500件だったが、2017年にはほぼ120万件と123倍にも上った。これはスイス国民の7人に1人が検査を受けた計算だ。ちなみにドイツでは少なめで17人に1人が検査を受けていたという。


s-iwasawa01.jpg[執筆者]
岩澤里美
スイス在住ジャーナリスト。上智大学で修士号取得(教育学)後、教育・心理系雑誌の編集に携わる。イギリスの大学院博士課程留学を経て2001年よりチューリヒ(ドイツ語圏)へ。共同通信の通信員として従事したのち、フリーランスで執筆を開始。スイスを中心にヨーロッパ各地での取材も続けている。得意分野は社会現象、ユニークな新ビジネス、文化で、執筆多数。数々のニュース系サイトほか、JAL国際線ファーストクラス機内誌『AGORA』、季刊『環境ビジネス』など雑誌にも寄稿。東京都認定のNPO 法人「在外ジャーナリスト協会(Global Press)」監事として、世界に住む日本人フリーランスジャーナリスト・ライターを支援している。www.satomi-iwasawa.com

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