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1Dはグループとしてシングル1位になれなかったのに...アイドルとラジオ局の不思議な関係とは?

Why Harry Scored His First No.1 Song

2020年09月16日(水)18時20分
クリストファー・モランフィー

スタイルズより先にシングルチャートで1位を取ったのは、路線の違いで1Dを脱退したゼイン・マリクだ。16年の冬、彼の気だるくて官能的なソロデビュー曲「ピロートーク」は、熱烈な1Dファンのダウンロードによる支援もあって、晴れて全米トップに立った(1週間だけの天下だったが)。

1Dは大量のCD販売やダウンロード数を誇ったが、グループとしてシングルで1位になったことは一度もない。アイドル系バンドの人気と、チャートの間には複雑微妙な関係があるからだ。

キュートな若者グループがアルバムを売るのは、ビートルズやモンキーズの時代から難しいことではなかった、そして70年代以降は歌って踊れるジャクソン・ファイブやオズモンズ、ニュー・エディションなどのグループが人気になり、アルバムでもシングルでもチャート1位に駆け上がっていた。

89年にはニュー・キッズ・オン・ザ・ブロックが、年間売り上げ2位のアルバムから2つの全米1位を含むトップ10シングル4枚を放った。しかし90年代に入るとラジオ局の系列化が進み、リスナーのターゲットを絞り込む番組が増えた。結果として、「お子様向け」のティーンポップは重視されなくなった。

90年代終わり頃にアイドルバンドの人気は再燃したが、ラジオで聴くファンは減っていたから、それがチャートの足かせになった。

バックストリート・ボーイズとイン・シンクは99年と00年にアルバムチャートで1位になったが、シングルで1位を取ったのはイン・シンクの「イッツ・ゴナ・ビー・ミー」のみ。バックストリート・ボーイズの名曲「アイ・ウォント・イット・ザット・ウェイ」は6位が最高だ。

オンエア回数がネック

ラジオ局がアイドルバンドに不利な状況は21世紀になっても続いている。ビルボード・ホット100がデジタル配信版の売り上げも集計に加えたのは15年ほど前。それでティーンポップの路線も、ネット経由のダウンロード数や再生回数を競う派と、伝統的なラジオ局へのリクエスト数で勝負する派に分かれた。

ジョナス・ブラザーズがアイドル全盛期にナンバーワンヒットを放てなかったのも、ラジオが敗因だ。彼らにとって00年代最大のヒット曲は08年の「バーニン・アップ」。ダウンロード数は200万だが、ラジオのオンエア回数は55位で、ホット100では5位止まりだった。

10年代には、ジャスティン・ビーバーを同じ運命が襲った。YouTubeとiTunesに「神」として君臨したビーバーも、最初はラジオで苦戦した。「ボーイフレンド」は1週間で50万回もダウンロードされたが、ラジオで人気が振るわず、ホット100では1位に到達できなかった。

1Dもパターンは一緒だ。プロデューサーのサイモン・コーウェルが10年にイギリスのオーディション番組『Xファクター』の参加者を集めて結成したグループで、メンバーはナイル・ホーラン、ゼイン・マリク、リアム・ペイン、ルイ・トムリンソンにスタイルズの5人。彼らもアルバムは飛ぶように売れたが、シングルはラジオでかけてもらえなかった。12年の「リヴ・ホワイル・ウィアー・ヤング」は発売後1週間で34万1000回のダウンロード数をたたき出したが、オンエア回数は50位。チャートは3位が最高だった。

ザ・フーのパクリ疑惑がささやかれた13年の「ベスト・ソング・エヴァー」はミュージックビデオ再生回数の記録を塗り替えたが、ラジオのオンエア回数は53位で、チャートは2位止まりだった。

14年の「ストーリー・オブ・マイ・ライフ」は6位、15年の「ドラッグ・ミー・ダウン」は3位。いずれもラジオで振るわず、1Dは活動休止まで一度もシングルチャートで1位に到達しなかった。

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