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子育て

誰もが容赦ない「選別」にさらされる中学生時代を見つめ直す

Don’t Blame the Kids

2020年06月30日(火)17時20分
ジュディス・ワーナー(作家)

一体どういうことなのか。

ひょっとすると、その答えはさほど大きな謎ではないのかもしれない。筆者の周囲の親たちが、かなり心配性であることは分かっていた。彼らは中学校と考えただけで、とてつもない恐怖に陥った。

無理もない。娘が6年生になる頃には、『ミーン・ガールズ』(意地悪な人気女子3人組に転校生が翻弄されるコメディー映画)が、お泊まり会で見る定番になっていた。やがて子供の社会のピラミッドを象徴する「クイーン」とか「アルファ」といった表現が聞かれるようになる。

そこにiPhoneと、多種多様なソーシャルメディアが登場して、「最近の中学生は、昔よりずっとひどい経験をしている」という確信が深まる。昔よりも物事が仲間にさらされやすくなり、ある母親の言葉によれば「より屈辱的」になったというのだ。

だが、筆者が娘と同級生を観察したところでは、現代の中学生の経験は、筆者の頃とさほど変わらない。昔と同じ友達同士の陰謀があり、さまざまな駆け引きによってお互いに惨めな思いをさせ合う。

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中学生時代を論じたワーナーの新書 CROWN

確かにテクノロジーは進歩したが、それでやっていることは、昔の中学生が固定電話や授業中に回した手紙でやっていたことと変わらない。

最近の中学生は、誰かが書いた悪口をスクリーンショットして、ターゲットになっている友達に「誰が敵で誰が味方か教えてあげる」。筆者たちの時代は、友達に電話をして、わざと第三者の悪口を言わせ(本人が聞いているとも知らずに)同じことをした。

親の自己効力感が低下

昔と大きく(しかも悪いほうに)変わったのは、親だ。

筆者の時代は、6年生は大きな自由を手に入れ始める時期だったが、今では親がこれまで以上に子供の人間関係に首を突っ込む時期だ。自分の子供を「擁護する」ために、仲間外れやいじめ、場合によっては手が出るなど、それこそ中学生のように振る舞う親もいる。子供がやめてくれと懇願することもあるほどだ。

過去数年、取材で親たちから聞く話には驚きっ放しだ。パーティーはもちろん車の相乗りまで、子供の友達の誰を入れて誰を入れないか、フェイスブック上のルックスで決めるという(7年生のダンスパーティー前に息子の友達が集まる際、「玄関が狭くて集合写真が撮れないから」と言い訳して、人気のない子を締め出した母親もいた)。親が中学生じみた見方にがんじがらめになるのだ。

それは親がひどい人間だからではない。不安だから、あるいは無力だからだ。中学生のわが子が悲しそうだったり、友人をなくしたり、泣いて家族げんかを始めたり、怒って自分の部屋に引きこもったりすれば、人生で最も重要な仕事をしくじっているように感じさえする。2015年に発表された研究では、思春期に入ると実際に親の自己効力感(子育てにどの程度自信があるか)が著しく低下することが分かった。

実際、それは今に始まったことではない。特に今の親の世代にとって、中学生の「選別」競争はとりわけつらい。長年くすぶっていて中年初期に頭に浮かびがちな、階級や富やステータスの問題について、親自身のスイッチが入るせいだ。こうした全ての引き金を思えば、親が主導権を握ろうとして子供じみたことをするのも意外ではない。問題はその結果、状況を悪化させてしまう点だ。

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