人間は自然から離れたことで病んでいる──土を愛した女性のガーデニング哲学
Photograph by YOSHIHIRO MAKINO
夫のクイパーズは長年にわたって環境政治学や人間と自然の関係を研究し、執筆活動を行ってきた。祖父母は父方も母方もミシガン州に農場を所有していて、「地元を離れるまでは、誰でもブドウの枝の誘引やトウモロコシの穂を刈る時期を知っていると思っていた」。5月に出版されるクイパーズの回顧録『ザ・ディア・キャンプ』は、農場での経験がいかに家族を癒やしたかを書いている。
その中で彼は、生態学者ポール・シェパードの言葉を引用している。「土は人間や農業の出現よりもずっと前から、複雑な生命の源だった。土は今も私たちの幸せに不可欠だが、多くの人は触れたこともない」。人間は自然から離れたことで病んでいると、クイパーズは考える。
クランツとクイパーズは、人間が自然に立ち戻る方法を提唱しようとしている。その目標を達成するため、クランツは子供たちに庭造りを教える取り組みを続けている。
Photograph by YOSHIHIRO MAKINO
自分で育てたものを食べれば、より健康的なだけでなく栽培プロセス(食べ物は「食料品店の棚に魔法のように現れるわけではない」)を知ることにつながる。育てるのに必要な忍耐を学ぶことにもつながり、「最高の教師」である失敗の価値や、野生生物との共存(毒を使わず虫よけをする)の必要性を知ることにもなるとクランツは言う。
ガーデニングは、より大きな生態系と自分とのつながりを知る行為だと彼女は語る。最もうれしいのは、子供たちがガーデニングを通じて植物や野菜が「季節と共に移り変わり、また元の状態に戻る」のを見つめる様子を眺めることだという。
「自然のプロセスを理解できれば、自分のもっと深い部分と、もっときちんと向き合える」
※6月4日号(5月28日発売)は「百田尚樹現象」特集。「モンスター」はなぜ愛され、なぜ憎まれるのか。『永遠の0』『海賊とよばれた男』『殉愛』『日本国紀』――。ツイッターで炎上を繰り返す「右派の星」であるベストセラー作家の素顔に、ノンフィクションライターの石戸 諭が迫る。百田尚樹・見城 徹(幻冬舎社長)両氏の独占インタビューも。
[2019年4月 2日号掲載]