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東南アジア

中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも安全でもない「世紀のプロジェクト」

Mega-Dam Power Move

2025年11月12日(水)21時10分
ビベク・バンダリ(ジャーナリスト)

国際人権連盟の昨年の報告書は、チベットの水力発電ブームはチベット文明や環境、下流域の国々に「取り返しのつかないダメージ」を与え、中国の計画は「人間への影響、科学的根拠、水力発電による気候変動の深刻化を無視している」と指摘した。

インドに拠点を置くチベット政策研究所のテンパ・ギャルツェン・ザムラ副所長によれば、水力発電でグリーンエネルギーを賄うという考えは「時代遅れ」だ。

水力発電所は耐用年数が短く、生態学的・社会的代償も大きいため、もはやグリーンエネルギーとは見なされないという。

「この地域はチベット文化の聖地で、太古の森と希少種の聖域だ。ダムはこれらの森の広範囲を水没させ、野生生物の生息地を破壊し、脆弱な山地生態系を不安定にし、この地域と下流域で地滑りや洪水を増加させるだろう」

1992年、全国人民代表大会は三峡ダムの建設を承認。だが、出席者2633人中177人が反対、664人が棄権、25人がプロジェクト関連の懸念と論争を理由に無投票という異例の事態だった。

ダムの建設は、魚の幼生数の減少、魚種の変化、下流の河床浸食、貯水池による地滑りや地震の危険を招き、移住を余儀なくされた住民も100万人を超えた。

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