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中国が進める「巨大ダム計画」の矛盾...グリーンでも安全でもない「世紀のプロジェクト」

Mega-Dam Power Move

2025年11月12日(水)21時10分
ビベク・バンダリ(ジャーナリスト)

「このプロジェクトの生態系や環境への影響が特に気がかり」だが「具体的な計画は全て機密扱いだ。浸水や寸断の恐れのある生息地、川の流量や水温の変化など正確な影響を評価し緩和する方法は分からない」とウェンは言う(プロジェクトの性質上、本人の希望で仮名)。

中国の環境アセスメント関連の法規制には情報公開に関する規定があるが、国の規定で機密保持が求められている場合は開示義務がないとも明記されている。

昨年、中国の国家林業・草原局のウェブサイトに掲載され、中国最大のSNSアプリ微信(ウェイシン)の祁連(チーリエンシャン)山国立公園のアカウントにも再掲された通知(既に削除済み)には、ヤルツァンポ大峡谷国家級自然保護区の91万ヘクタール超の保護区のうち4万2000ヘクタールが「プロジェクト用地」として指定解除されると記載されている(当該区域の位置は明らかにされていない)。

政策に「根本的な矛盾」

8月、中国のある弁護士がこのプロジェクトに関する政府情報の開示を求めた申請者の文書を微信でシェア。だが中国生態環境省はこの要求(と環境影響アセスメントの開示要求)を「国家機密」に関わるとして拒否した。

この世紀のプロジェクト「メトク・ダム」は年間発電量3000億キロワット時と三峡ダムの約3倍、立地は生態学的に脆弱で政治的にも中国とインドの係争地域から約50キロしか離れていない。

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